40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

投稿論文がリジェクトされてシュトーレンをつつく夜

今日、論文がリジェクト(不採用)されたとの連絡を受けました。自信のある論文だっただけに、連絡を受けてからしばらく車の中で呆然としていました。

 

この論文の内容は、近年関心のあるテーマですが、大学以来の専門分野とは異なります。私の中では、テーマB(◯対抗)としている研究テーマです。

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知人のアドバイスも受けながらこのテーマに該当しそうな学会を探し、投稿先を定めました。論文投稿時の状況は以下のとおりです。

・投稿する学会誌を決めてから、安くない入会金と年会費を納入して入会。

・この学会に知り合いは1人のみ。

・投稿の際に必要な所属名(必要なのか疑問ですが)は、自分の所属する会社名。

アウェイ感十分ですが、岡山大学図書館にこもって過去の学会誌掲載の論文を読みあさり、傾向を抑えたつもりで論文を書きました。

 

しかし、門前払いでした。

 

リジェクトの理由として挙げられたのは次の3点です。

1 示された事実からこの結論を導くことは難しい。

2 根拠となるべき表がない。

3 AとBの関係が明示されていない。

 

1については、論証不足や論の飛躍と言われれば、そうかもしれません。もう少し材料を準備して周到に論を展開するべきでした。

表(2)があれば理解を助けることは分かっていたのですが、紙幅の関係で表は落としました。ただ、表に示されるような各項目については、本文中でそれぞれ詳しく触れているつもりです。これで根拠がないとまで言われるとつらいです。

3については、指摘された箇所よりも前の章でA・B間の関係を示しています。指摘箇所で書いていないのは丁寧さに欠けるのかもしれませんが、明示されていないことはないはずです。

 

投稿論文がリジェクトされたのは初めてではありませんが、今回のリジェクト理由には3割ほど納得がいきません。分野や学会ごとの「作法」の違いもあるのでしょうか。

 

さすがに落ち込んだので、売れ残りのシュトーレンを買ってきてフォークでつついて慰めています……。

科研費(奨励研究)の申請は持参するべき。可能なら。

科研費は研究機関に所属する「研究者」を対象とする助成ですが、それ以外の人でも応募できる「奨励研究」という種目があります。

教育・研究機関の教職員等であって、他の科学研究費助成事業の応募資格を持たない者が一人で行う教育的・社会的意義を有する研究

奨励研究 | 科学研究費助成事業|日本学術振興会

 

私のような在野の(自称)研究者でも助成を得ることが可能な制度です。限度額が100万円と、一般的な科研費に比べるとごくごくわずかですが、仕事の合間に行う研究に100万円以上の金額を研究に使うことはかなり困難です。時間的に。

私はほぼ毎年のペースで応募していますが、採択されたのは10年ほど前に一度だけ。1年前の申請(研究計画書)はかなり自信があったのですが、あえなく不採択。

knada.hatenablog.com

 

例年の締め切りが12月上旬なので、今年こそは、と意気込んで11月下旬から研究計画書の作成に取りかかりました。その際、参考にしたのは次のスライド。日本学術振興会特別研究員の申請用ですが、科研費の申請にも役立ちます。

www.slideshare.net

 

本来は締め切り前に研究計画書を仕上げて郵送する予定だったのですが、最後の詰めがなかなかできず焦っていたところ、締め切り最終日は東京で仕事だったことを思い出しました。科研費を扱っている日本学術振興会は麹町にあり、申請は持参も可能なのです。

というわけで、締め切り前日の夜、秋葉原での仕事を終えてからホテルで計画書を書き、データをネットプリントに転送しました。雨の中、傘も持たずにホテルを出てコートを濡らしながらたどり着いたコンビニで計画書をプリントアウトし、その場で購入した封筒に入れてなんとか準備できました。

 

快晴の翌朝、四ツ谷で降りて青空の下をうつむき加減に歩を進める上智大の学生に紛れて日本学術振興会の入っているビルに向かいます。最上階近くの受付会場入口には、昨年のノーベル賞を紹介するパネルが誇らしげに掲げられていました。

受付会場に入り計画書を手渡すと、椅子にかけて少しお待ちください、とのこと。なんとその場で書類に不備がないかチェックしてくれたのです。郵送ではもちろんチェックはしてくれません。

幸い、不備はありませんでしたが、持参できるなら持参したほうがいいのは間違いありません。書類不備による不採択を避けられるのですから。

 

しかし、私のように地方在住だと毎年持参するわけにはいきません。麹町まで来たこの日、無事申請できたのですが、東京と、東京から離れた地方との研究格差(わずかですが)を感じてモヤモヤしたのは事実です……。

 

秋冬限定、宝石のような甘納豆 - 村瀬食品(香川県高松市)

広くなったり狭くなったりする山道を車でたどって着いた目的地は、周りの風景に溶け込んで、目立つとは言い難い建物。控えめに立つ「甘納豆」の看板が目印です。

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香川県高松市の山間部にある村瀬食品は、甘納豆を生産・販売する、知る人ぞ知る店。この甘納豆は、秋口からゴールデンウィークまでの季節限定生産です。

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店内では袋詰めされた甘納豆が販売されています。1袋、300g強(種類によって若干増減します)で300円とかなりお得な価格設定。

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村瀬食品の甘納豆は、外側の薄皮1枚が柔らかく、そこから内は程よい歯ごたえが残っています。そして最大の特徴は豆の強い香り。素材である豆の味が十分に活かされた甘納豆なのです。私がもっとも好きな黒豆は、実は隠れた香川の特産品。

4種の豆はやや透き通った色が宝石のようです。こちらをホットケーキやパウンドケーキに入れて焼くと見た目も鮮やかな和風スイーツに仕上がります。

厚みのある芋納豆も食べ応えがあって人気。

 

賞味期限が約2週間と短いのは保存料を使用していないからとのこと。

どなたに手渡しても、後で必ず「おいしかった」と言ってもらえるので、行くと何袋も甘納豆を購入してしまいます。

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2016年の営業は12月29日まで、2017年の営業は1月7日からだそうです。

 

村瀬食品

香川県高松市香川町東谷865-2 

関連ランキング:和菓子 | 高松市その他

www.e-komachi.com

ローカルな民俗芸能からも導かれる生き生きとした中世の姿 『乱舞の中世』(沖本幸子著)

サントリー学芸賞受賞のニュースを見て知った本書。数日後、最も興味を惹かれた本書を購入して読み終えました。専門外の人間でも途中でつまづかずに読み進めることができるのは、著者の文章力のおかげでしょう。

 「白拍子」「乱拍子」といった、これまで実態が不鮮明であった点に照射して暗がりを取り去っていく論述は、とても気持ちがよく湧き出てくる好奇心を満たしてくれます。映像記録がない中世や近世の芸能を復元するのに相当な困難が伴うことは想像できますが、この点をまずは文献史料の丹念な検討により明らかにしていきます。

 

そして後半には地域に伝わる芸能も対象となって論が進みます。筆者が地域の芸能を重視していることは、「あとがき」の最後の文章で表明されています。

最後に、私がここまで研究を続けてこられたのは、さまざまな地域の芸能との出会いがあったからにほかならない。その土地その土地で長らく伝えられてきた芸能には、それぞれのすがすがしさがあり、そのすがすがしさに、いつもしみじみ心を洗われてきた。

個人的にはこのパートにのめり込みました。なぜなら、私が民俗芸能に抱いていた長年の疑問が払拭されたからです。

 

各地で伝えられているローカルな地芝居や神楽、獅子舞などの民俗芸能には、古い様相が認められるという考え方(仮説)があります。乱暴に言えば次のような構図です。

 

中央(往々にして都が置かれていた京とその周辺)で要素Aが成立。

やや遅れて要素Aが周辺に広がる。

さらに時間が経過、中央で要素Aは廃れて要素Bに置き換わるが、周辺の一部には要素Aが残っている。

この仮説に従えば、要素成立の時系列は、周辺に見られる要素A→中央にある要素B、と推測できる。

 

この考え方は、柳田國男が「蝸牛考」で提唱した周圏論(方言が中央から周辺に向かって同心円状に伝わる)に近いと言えるでしょう。

 

1年のなかで折々に出会うローカルな神楽や獅子舞を観ながら、上記の仮説は成り立つのだろうか、という疑問を常に持っていました。しかし、文献のみならず、上鴨川住吉神社の神事舞(兵庫県加東市)や黒川能(山形県鶴岡市)などの地域の芸能の観察からかつての芸能の姿を復元する筆者のプロセスは明快で、私の疑問は氷解しました。 

本書は、民俗芸能へのまなざしを変える一冊だと思います。次に出会う民俗芸能は、どのように見えるでしょうか。

多彩な色材は一見の価値あり。「色の博物誌」@目黒区美術館

TwitterのTLにたびたび流れてくる感想に押されて「色の博物誌」を観てきました。

山手線の電車を目黒駅で降りて、坂道を下っていくと見えてくる目黒川。この川を渡るのは何年ぶりだろう、などと少し昔を思い出しながら川沿いをしばらく歩いて目黒区美術館に到着しました。

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「色の博物誌」では国絵図と浮世絵を中心に江戸時代の色を紹介しています。なかでも私が観る時間を多く費やしたのは国絵図と色材です。

 

国絵図は、岡山大学が所蔵する慶長〜元禄期の備前国備中国(いずれも現岡山県)を描いたもので、とても色鮮やかです。江戸時代の絵図としては古い時期ものを数点まとめて見られる機会はそうそうなく、比較することで視点や描き方の差、埋め立て地の進展度合いなどを読み取ることができます。

また、絵図のどこにどんな色材が用いられたかが示されており、制作時期によって用いられる色材の変化も分かります。

 

国絵図コーナーと浮世絵コーナーの間には、鉱物や植物など多種多様な色材が展示されています。文字や写真で見たことはあっても、辰砂(朱、赤)や群青(青)、胡粉(白)など、実物を初めて目にする色材も多く、見入ってしまいます。

加工前の藍の展示や、イタボ牡蠣から胡粉を製造する工程の映像などもあり、小スペースの展示ながら相当な手間がかけられていることがうかがえます。

 

「色の博物誌」は派手でもなく大規模でもありませんが、しっかりとした研究の蓄積の上に成り立った展覧会であることは疑いようがありません。個人的には、こういった展覧会こそ数多く観たいです。

 

最後に、エントランスに戻って改めて読んだ館長の「ごあいさつ」に心を打たれました。(急いでiPhoneのメモに打ち込んだので間違いがあるかもしれません)

こうしたことが可能になったのは、学芸員たちの努力と経験に拠るところはいうまでもないことですが、

大きな組織の美術館や博物館では到底なしえないような、

むしろ当館のような規模の小さな美術館であるからこそなし得た事業で、

企画から交渉、作品解説、展示にいたる全ての作業を

少ないスタッフによってきめ細かく目配りをしていることの積み重ねによる

産物ということができます。

トップが部下の日頃の取り組み(概ね表に出ることのない)を、胸を張って対外的なメッセージとして伝えているのです。このような上司の下で働けるのは羨ましい限りです。

 

「色の博物誌 江戸の色材を視る・読む」

場所:目黒区美術館

会期:〜2016年12月18日(日)

観覧料:800円(一般)

mmat.jp

紅葉の殿ヶ谷戸庭園、クルミドコーヒーを巡る国分寺休日充実コース

昨日、紅葉を見るために殿ヶ谷戸庭園(とのがやとていえん 東京都国分寺市)を訪れました。

国分寺駅から徒歩3分という立地です。駅から至近距離なのはなぜ、と思いましたが、この点は、甲武鉄道(現JR中央本線国分寺駅開業(明治22年)後に別荘地の庭園として整備された(大正2〜4年)ことと関連するのでしょうか。

 

前々日に降った雪が日陰にまだ残っていました。紅葉と雪という滅多にない光景に出合えて少し得した気分に。

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紅葉シーズンの土曜日でしたが、都心の庭園や観光地に比べれば人も多くはなく、撮影しながらゆっくり散策できます。

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紅葉のピークは少し先のようにも思えるので、来週あたりまでは紅葉を楽しめると思います。

 

紅葉を十分堪能した後、国分寺駅から西に1駅の西国分寺駅に向かいます。目的は西国分寺駅前のクルミドコーヒー

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大きな木の中にいるような店内には、ファンタジー好きならワクワクする仕掛けがたくさん配されています。大きな壁掛け時計、実験室のような地下室・・・。

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オーダーしたのは里芋と肉味噌のサンド。くるみの入ったマフィンはここならでは。パテ状になった里芋は濃厚で、しっかり味付けされた肉味噌が合います。

ちなみに、11:30までだとマグカップ入りのコーヒーを500円で提供してもらえます。

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一人でのんびり考えごとをするにも、家族で絵本を読みながら談笑するにも、最適のカフェです。このあたりは、お店をつくった影山知明さんの本『ゆっくり、いそげ〜カフェからはじめる人を手段化しない経済〜』と繋がっているように感じます。

本のタイトルで引っ掛かった方は、とりあえずクルミドコーヒーで1杯のコーヒーをいただいてみてはいかがでしょうか。

kurumed.jp

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殿ヶ谷戸庭園・クルミドコーヒーは、国分寺休日充実コース。新緑の季節になれば再訪したいと思います。

 

実は茶どころ高知の芳醇な茶を食事やスイーツと一緒に - 土佐茶カフェ(高知市)

実は茶どころの高知。仁淀川の上流や四万十川上流では斜面地に茶畑を見ることができます。その高知の茶「土佐茶」をカフェで味わうことのできる場所が高知市街地の中心部にあります。それが土佐茶カフェ

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席に着くとお冷とともに冷たい煎茶が運ばれてきます。一口含むと、想像以上の香りが鼻を抜けていきます。高知の茶、あなどれません。

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オーダーしたのは、四万十豚と野菜のせいろ蒸し定食。せいろには色鮮やかな野菜が詰め込まれ、味噌汁も具だくさん(冬瓜、焼き豆腐、わかめ)です。味噌ベースのタレは強めの酸味がくせになります。

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 甘く味付けされたさつまいもは食感が絶妙。メイン以外のおかずにも手がかけられています。

温かいほうじ茶もいい香り。

これで600円。

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別の日にいただいた、さっぱり味のカツ丼。レモンと塩を好みでかけて食べます。もちろん小鉢や味噌汁もついています。こちらは550円。

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そして、食事とあわせて注文したいのがアフターセット。250円で日替わりの茶とスイーツがプラスされます。

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スイーツは10種類程度の中から選べます。いずれも茶を使っているようです。しっかりとしたロールケーキや大福もあり、250円の一部とは思えない価格。

この日は抹茶のパンナコッタを選択しました。栗もトッピングされています。

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テーブルに置いてある解説を見ながら茶を淹れます。碗に湯(ポットに入ってきます)を入れて、その湯を急須に入れて、さらに湯冷ましに移して……といった具合です。

淹れた茶は薄めのグリーンで輝いています。香りと味は、これまでにいただいた冷たい煎茶、温かいほうじ茶を超えます。淹れたての強みでしょうか。

茶も湯もたっぷりあるので、何度も淹れることができますが、茶の味は刻一刻と変わっていきます。同じ味にならないのが難しく、楽しいところかもしれません。

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高知の茶をアピールする土佐茶カフェに限らず、純粋に手軽に日本茶を飲めるカフェなどがもっとあれば嬉しいです。コーヒーと同じように日本茶の味や香りの違いををカフェで楽しめるようになれば、私はコーヒーから茶に乗り換えます。

 

ひだまり小路 土佐茶カフェ

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