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独り身の40代、大学院進学と博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

冬と言えばカキオコ。大粒の牡蠣と鉄板上でのパフォーマンスを楽しむ。@安良田(岡山県備前市)

冬になると必ず通う場所があります。岡山県の東部、兵庫県との県境にある備前市日生(ひなせ)です。目的は牡蠣のたっぷり入ったお好み焼き・カキオコ。

牡蠣の養殖が盛んな日生にはカキオコを食べさせてくれる店がいくつもあり、牡蠣のシーズンになると週末は小さな港町がたくさんの人で賑わいます。

 

この日も12:00前に訪れたにも関わらず、店の外にはすでに行列が。

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私がひいきにしている安良田(あらた)では、大粒の牡蠣10個程度を鉄板で焼き、それを生地の上にのせて焼きます。

 席は鉄板周りのカウンター(と呼べるほどスペースはありませんが)とテーブルがありますが、鉄板周りのほうが、あらたをより楽しめます。というのも、店を回している女性の方々(日生では「おねえさん」と呼ぶらしいです)の口と手のパフォーマンスを間近で体感できるからです。

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下から、生地、キャベツ、牡蠣、生地の順。焼けると、ひっくり返して卵の上にのせて出来上がりです。

ネギたっぷりがうれしいですね。

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お好み焼きの形が崩れるほどの大粒の牡蠣は濃厚で、ソースに負けていません。むしろバランスが取れています。1枚1,000円と、お好み焼きとしては決して安くありませんが、この牡蠣の大きさと量を考えると満足度は十分です。

隣のグループは一口食べるなり缶ビールを注文していました。ビールにも間違いなく合うのでしょう。

 

3月に向けてまだまだ日生の牡蠣の身は大きくなるとのこと。今からがカキオコを楽しむシーズンの本番です。

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安良田 (あらた) (備前/お好み焼き) - Retty

 

災害が強く意識される現在だからこそ広く読まれて欲しい。『地球の歴史』(鎌田浩毅著)

シンプルなタイトルのとおり、地球の歴史を上・中・下の3巻で解説する新書です。上巻は地球の誕生から、中巻は生命の出現から、下巻は超大陸の分裂と爬虫類の出現から現代、さらに未来予測までとなっています。

書店で軽く立ち読みして、下巻から購入することにしました。歴史とはいえどこからでも読み進められる構成になっている点、恐竜や人類が登場する身近な時代だと理解しやすい点を考慮したためです。

 

本書では、「長めのあとがき」から読むことを推奨します(私はどの本でもあとがきから読みますが)。数ページで地球科学という分野の特徴をのぞき見ることができます。

地球科学は自然科学の一分野だが、自然科学のなかで、これほど「再現性のない」自称を扱う分野も珍しいのではないだろうか。(pp.254-255)

 物理学の論理は、宇宙のどの場所でも、またいつの時代にも普遍的に成り立っていなければならない。これは自然科学最大の特徴で、誰が実験しても条件が揃えば同じ結論が導かれる。これに対し、地球科学では、宇宙に唯一無二の存在である地球を対象とすることで、現代物理学ではまだ説明できない現象も扱わなければならない。(p.255)

そもそも不可逆な現象を多数扱うものだから、理論の通りに進行することが少ない。言い換えれば地球科学は「例外にあふれている」という特徴を持つ。地球の歴史には思わぬ事件が多数登場するが、われわれ地球科学者は起きた現象をできるだけ正確に記述しようとする。(略)しかし、それがなぜ起きたのかという根源的な質問に答えられる場合は、実に少ない。(p.258)

こうした記述を読むと、因果関係を蓋然性の高さで説明する人文系の多くの分野では地球科学に親近感を持つのではないでしょうか。この親近感を得て本文に移ると、難しい専門用語も軽々と飛び越えて読み進められます。

 

下巻では、2億5000万年前から現代までの間、大陸が移動し続けていること、隕石衝突やたびたび起こる大規模噴火などが語られます。それらは気候を左右し、生物に大きな影響を与えます。ヒト出現以降、人間の生活を脅かすのであればそれらは「災害」と呼ばれるでしょう。

しかし、災害の前提にあるのは地球の活動です。個人や地域に降りかかってくる災害を考えるうえにあたり、マクロな視点での地球活動を知っておいてもいいように思います。地球レベルでの動向を踏まえると、各所で叫ばれている近い将来の災害(たとえば南海トラフ地震など)以外の災害の可能性も頭の片隅に置かざるを得ないし、起こるであろう災害に対してもやや冷静な目で見ることができるのではないでしょうか。

 

災害が強く意識されている今だからこそ、本書は広く読まれて欲しいと思います。

古代にはどうやって朱を得ていたのか。「古代の彩り」@徳島県立博物館

2016年末のエントリで次のように書いてしまったので、今年は地方の小さな展覧会の感想もなるべくアップしていきたいと思います。

大きく派手な展覧会よりも、地域性を重視し、館のサイズに応じた展覧会こそが、全国各地に博物館・美術館が存在することの意義だと思うからです。

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というわけで2017年最初に取り上げるのは、徳島県立博物館で開催していた「古代の彩り」です。大きな展覧会ではありません。

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日本列島で古代から用いられてきた「朱」。赤く塗られた弥生土器や、朱の付着した鏡(古墳の内部に敷き詰められた朱が付着したもの)の展示で、古代の朱との関わりを見せてくれます。

朱の原料は辰砂(しんしゃ)やベンガラといった鉱物です。昨年、目黒区美術館で開催された「色の博物誌」でも辰砂やベンガラは色材として並んでいました。今回徳島まで足を運んだのは、「色の博物誌」を観て色材に強く関心を持ったこともあります。 

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展示中盤には、弥生時代と同様の方法で岩礫から辰砂*1を得る実験のプロセスと結果が展示されています。辰砂を含む石灰岩の岩礫をサイズの異なる石器で粉砕し、さらに水簸(粉末を水に混ぜて石と水銀朱を分離する)の工程を経ます。展示資料と解説パネルで、石器の割れ具合や水簸実験の結果を比較して見ることができるようになっています。

この見せ方は歴史系と自然系の部門を有する博物館ならでは。鉄すら広く普及していない時代に朱を得ていた方法がよく理解できます。このパートは「古代の彩り」の売りのひとつではないでしょうか。

 

古代の彩り -徳島の朱-

会期 2016年12日3日(土)~12年25日(日)(終了しています)
会場 徳島県立博物館徳島県徳島市八万町向寺山)

阿南市若杉山遺跡は、日本列島で唯一、発掘調査によって弥生時代の辰砂(水銀朱の原料となる鉱物)を採掘していた鉱山跡であることが明らかになっている遺跡です。

この特別陳列では、若杉山遺跡をはじめ、近年、調査が進められている阿南市内の赤色鉱物採掘遺跡の出土品や、鮎喰川・吉野川下流域の集落や古墳から出土した水銀朱と関連する資料を展示し、赤色顔料の生産・流通・消費のあり方や自然科学的な分析といった様々な視点から、古代の朱に迫ります。

 徳島県立博物館 展示

*1:展覧会では粉末状になった辰砂を水銀朱と呼称していました。

「この先10年を研究者として生きるには、今が正念場」と言われて

「なだ君がこの先10年を研究者として生きるには、今が正念場」

先日、人づてに聞いた言葉です。

言葉を発したのはNさん。Nさんは大学などの研究機関に属していませんが、論文の質も数も十分(ただし正当には評価されていないような)という方です。

(以前、Nさんのことを話題にしたエントリはこちら)

knada.hatenablog.com

 

さて、私が自分の代表的な研究成果を挙げるなら、マイナーテーマながら概説書などでも主要先行研究として取り上げられている論文になります。ただし、この論文は10年前の発表です。

この10年間を振り返れば、興味関心がさまざまな方向に向き、それぞれの方向で論文を書いてきました。大学以来の研究テーマが壁にぶつかり、その壁を避ける道を探していたような気もしますが、結局、どれも体系立った研究にできませんでした。

科研費申請の業績欄を埋めるたび、この10年間にまともな研究成果を出せていないことを痛感します。

 

1年ほど前、しばらく関わる研究テーマを二つに絞り、最近、二つから一つにする覚悟を決めたところです。この研究でなんとか大きな果実を得たいと思っていますが、そのことをNさんも含めて広くは伝えていません。

 

こうした状況でのNさんの冒頭の言葉です。私がしばらく成果を出せていないことや、現状を打破するためにあがいていることがNさんには見えているのでしょう。勝負時は今、ということまで。

遠くから応援してくれていると解釈します。正念場を乗り切ります。

2017年に達成すること

元日なので、今週のお題「2017年にやりたいこと」に絡めて、2017年に達成することを。

 

1 新規論文1本投稿

今、準備している論文を仕上げて、この分野ではレベルが高いとされる雑誌に投稿します。

自分の中では「本命研究テーマ」なので、今後の研究はこの論文のデキにかかっています。この正月の間にデータ収集と分析の目処を立てておいて、年度末に向けての業務繁忙期を乗り切った後、本格的な執筆モードに入り、ゴールデンウィークには完成させる予定です。

 

研究面に限れば、2016年の成果は、論文0本(発表ベース)、口頭発表2本、リポート1本とふがいない1年だったので、2017年は踊り場から階段へ足を移さないと。

 

2 リジェクトされた論文の公表

先日、自信を持って投稿した論文があっさりとリジェクトされました。

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これまで関わりのなかった理系の学会に所属して投稿しました。先の広がりも見えていておもしろい研究テーマなのは間違いないのですが、現状で査読を通らないので、しばらくはこの研究を封印することにしました。

ただ、リジェクトされた論文については、修正のうえ早いうちにどこかで公表します。将来への布石にでもなれば。

 

3 大学院受験準備

今年中に最低限の学費はなんとか貯まりそうなので、来年度の入学を目指してどこかの大学院を受験します。

まだ受験先は決まっていません。仕事をしながらでも岡山から通える大学院を探し(ここが一番難しそう)、受験先に合わせて準備をします。

 

4 筋肉量を増やす

年々ひどくなっている肩こりの原因が筋力低下だと指摘されたため、昨秋からジムに通っています。ジムで筋肉量を測定してもらうと、肩だけではなく、足も著しく低下していることが判明。肩も足も筋肉量を増やします。

 

 

どれも一朝一夕には達成できないので、山を登るように少しづつ歩を進めていきたいと思います。 

2016年 お気に入りの本 3冊

昨日の記事で言及した展覧会に引き続き、2016年に読んだお気に入りの本3冊を紹介します。一般書に限ってですが。

 

『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著)

まず、私のような会社勤めの傍ら細々と研究を続ける人間に「在野研究者」という呼び名を与えてくれたことに感謝します。

本書では16人の個性的な在野研究者の「生き方」が紹介されており、今の在野研究者への応援歌とも言える本です。日々の生活との狭間で何度も研究を辞めようと思ってしまいますが、その際にはこの本を開くことにしています。

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『その日暮らしの人類学』(小川さやか著)

「Living for Today―その日その日を生きる―」をキーワードに、経済、社会の状況をしくみを問い直します。現代に存在する(そして影響力を持ちつつある)「主流派」とは異なる経済システムは、他地域だけではなく、過去の社会を考えるうえでも示唆に富みます。具体的な事例が多く読みやすい部類の新書です。

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『星々たち』(桜木紫乃著)

今年文庫化された『星々たち』。北海道の、どちらかといえば暗い風景がリアリティを持って描かれ、それがバックグラウンドとなって各編の登場人物を際立たせます。どうしようもない救われなさの深みにはまり込み、その先に何があるのかと読み進めていくと……。

直木賞受賞作品『ホテルローヤル』を読んで著者の描写に惹かれたのですが、それはもちろん健在。言葉の用い方に感嘆することしきりで、著者の紡ぐ文章をいつまでも読んでいたいのです。左手に持つ残りのページが少なくなってくると読むのが惜しくなってきます。

 

2016年 満足度の高かった展覧会 ベスト3

趣味と言えるほどではありませんが、博物館や美術館での展覧会を楽しみにしています。2016年は比較的いい展覧会に出合えた1年でした。

今年のまとめとして満足度の高かった展覧会を紹介します。中国・四国・近畿地方の展覧会に足を運ぶことが多いので、どうしてもそのあたり中心のセレクトになってしまいますが。

 

1位 「大原治雄写真展」@高知県立美術館

高知出身で移民としてブラジルに渡り、写真を撮影していた大原治雄。そのモノクロ写真は、光が本当に美しく、1枚1枚が物語を紡いでいるように見えました。かなりの点数が展示されたいたのですが、ブラジルにまだあるという他の写真も機会があればぜひ観たいです。

実はこの展覧会を観て以来、Flickrには主にモノクロ写真をアップするようになってしまいました。それくらい影響を受けたのです。

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2位 「アートと考古学」@京都文化博物館

考古学とアートという異世界の2者をうまくつなげた展覧会でした。遺跡から出土する1,000年前の土器や瓦は現代のアーティストにどう映っているのか、視点が変われば物の意味も変わるという例がいくつも示されていたと思います。

私は、この展覧会の成功は京都という場にあると見ています。地理的にまとまり、大学が密集、アーティストも多い、という特性が京都にあるためです。こうした試みが、将来、さらに展開していくことを楽しみにしています。

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3位 「氷河時代」@大阪市立自然史博物館

ブログの記事にはしませんでしたが、積み重ねられた研究と、大阪という属性が十分に反映された展覧会でした。解説書(「図録」ではありません)はちょっとした概説書で読み応えがあります。

同日に国立民族学博物館で「見世物大博覧会」を観たのですが、両者を観た結果、「氷河時代」に軍配を上げます(大阪に行くまでの本命は「見世物大博覧会」でした)。大きく派手な展覧会よりも、地域性を重視し、館のサイズに応じた展覧会こそが、全国各地に博物館・美術館が存在することの意義だと思うからです。

 

2017年に向けて

私は展覧会のタイトルと内容を見て、その博物館・美術館に足を運びます(多くの方はそうだと思いますが)。12月、「色の博物誌」という展覧会に惹かれて目黒区美術館を訪れました。記事にも書きましたが、館に入ってすぐのエントランスに掲げられた館長メッセージに感銘を受けました。部下の日頃の取り組みについて胸を張って来館者に伝えているのです。目黒区美術館を訪れたのは初めてでしたが、このメッセージを読んで、他の展覧会もいいに違いない、と確信したので目黒区美術館は再訪したいと思います。

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同様に、いい展覧会を企画した博物館・美術館については展覧会の内容に関わらず、とりあえず足を運ぶように心がけます。おそらく一定の水準は保証されているでしょうから。