40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

MY LITTLE LOVERと目玉焼きハンバーグ ―急逝した先輩との思い出

大学の先輩Aさんが亡くなりました。一昨日、急遽病院に搬送されてそのまま。40歳を少し過ぎた年齢です。

ある病気が原因ですが、前日まで元気だったそうで病気であることに誰も気づいてなかったようです。おそらく本人も。

 

Aさんは私の1歳年上で同じ研究室に所属していました。Aさんの誰に対しても同じ態度で接するところを尊敬していました。語学が堪能なAさんは1年間休学してイギリスに留学していたので、途中から私と同学年となり一緒に卒業を目指すことになります。

 

毎週聴き続けたMY LITTLE LOVER

大学入学時に英語力の無さを痛感した私は、専門的な英書を読む外書講読の授業が苦手でした。授業前の予習に辞書を引きながらかなりの時間を要しても、当日の授業の半分は理解できないような状態です。

授業についていくために、毎週、友人と一緒にAさんの部屋に上がり込んで予習のノートを見てもらうことになりました。その際、部屋で常にかかっていたのがMY LITTLE LOVER(現My Little Lover)のデビュー・アルバム「ever green」です。

毎週聴くうちに私もCDを買ってしまい、CDウォークマンにセットして持ち歩いていました。

無事取れた外書講読の単位は、MY LITTLE LOVERのファンになったこととの引き換えみたいなものです。

 

卒論と共にあった目玉焼きハンバーグ

卒論執筆が本格化する4年生の夏からは、毎日のように研究室でAさんと共に卒論に向き合っていました。

12月になると、卒論・修論を抱えた学生は研究室にほぼ泊まり込み状態になります。

この頃、私と友人は23:00になるとAさんを誘って、夜食と散歩を兼ねて毎晩近くのガストに出かけていました。冷たい空気の中をポケットに手を入れて、くだらない話をしながら店までの道を並んで歩いていたことを思い出します。

店内に入り、席に着いてみんなが注文するのは決まって目玉焼きハンバーグとライス。ガストのメニューの中でも低価格の組み合わせですが、裕福ではない私たちにとってはそれでも安くない食事でした。それを「卒論の追い込みだから」「気分転換だから」と言い訳しながら、毎晩贅沢をしていたのです。

 

目玉焼きハンバーグは無く、MY LITTLE LOVERを聴く今

Aさんの訃報を聞いて以来、大学時代のことがディテールとともに蘇ってきます。久しくガストにも行ってなかったのですが、今こそ目玉焼きハンバーグを食べる時だ、と思い立ったのが今日の夕方。車を停めてネットで検索してみると、なんとメニューから目玉焼きハンバーグが消えていました……。

ガスト<グランドメニュー>17.02.07現在

 

仕方がないので目玉焼きハンバーグはあきらめて、押入れの奥の何年も開けていないCDボックスを引っ張り出し、こんなの持っていたかな、というようなCDを繰ってevergreenを見つけ出しました。今、ヘビーローテーション中です。

リジェクトされた論文を別の雑誌に投稿してレモンパイを崩す夜

今、レモンパイをフォークで崩しながらこの記事を書いています。論文を無事提出して、夕食の買い出しついでに買って来たレモンパイです。

提出したのは年末にリジェクトされた論文を大幅修正したもの。リジェクトのメールを開いてからしばらくは呆然としていました。内容に自信もあったので……。

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リジェクトされた論文のテーマに見切りをつける

見たくないメールを受信してから数日を経て、冷静に考えて別の投稿先を探すことにしました。

同じ雑誌に再投稿する道もあるのですが、査読コメントに納得がいかない点や、私がこの学会の「作法」を身につけるまでに時間がかかる点を考慮しました。そしてなにより、この研究テーマに一旦見切りをつけたのです。

1年前の私は研究テーマを、A(本命)、B(対抗)の2つ掲げていました(実はもう1つありますが)。リジェクトされた論文はテーマBです。

A・Bどちらかのテーマで早いうちに成果を出して大学院に進学する予定でしたが、今回リジェクトされたことでテーマBについては諦めがつきました。このテーマでのネタはいくつかあり、しばらく研究を続けられそうな見通しも持っていますが封印することにしました。老後の楽しみに取っておきます。

 

論文を別の雑誌に投稿

このため、今回の論文は早いうちに世に出して「成仏」*1させるのがいいだろうと判断しました。早く出してもらえそうなところに相談し、投稿を受け付けてもらえることになりました。編集部の判断で掲載の可否が決まる「紀要」的な雑誌です。

厳しい査読がないとはいえ、一度はリジェクトされた論文なので大幅に修正し(一応査読コメントも参考にして)、投稿先の雑誌のスタイルに整えて、今日の夕方にメールで送信しました。

 

編集部の方は「内容的には問題ないと思う。もし掲載できなくても別の雑誌を紹介する」と言ってくれました。捨てる神あれば助ける神あり、とはこのこと。

 

初めて買ったレモンパイは甘さと酸味のバランスがいい感じです。

*1:Twitterのフォロワーさんの言葉をお借りしました。この状態を表すのに絶妙。

冬と言えばカキオコ。大粒の牡蠣と鉄板上でのパフォーマンスを楽しむ。@安良田(岡山県備前市)

冬になると必ず通う場所があります。岡山県の東部、兵庫県との県境にある備前市日生(ひなせ)です。目的は牡蠣のたっぷり入ったお好み焼き・カキオコ。

牡蠣の養殖が盛んな日生にはカキオコを食べさせてくれる店がいくつもあり、牡蠣のシーズンになると週末は小さな港町がたくさんの人で賑わいます。

 

この日も12:00前に訪れたにも関わらず、店の外にはすでに行列が。

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私がひいきにしている安良田(あらた)では、大粒の牡蠣10個程度を鉄板で焼き、それを生地の上にのせて焼きます。

 席は鉄板周りのカウンター(と呼べるほどスペースはありませんが)とテーブルがありますが、鉄板周りのほうが、あらたをより楽しめます。というのも、店を回している女性の方々(日生では「おねえさん」と呼ぶらしいです)の口と手のパフォーマンスを間近で体感できるからです。

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下から、生地、キャベツ、牡蠣、生地の順。焼けると、ひっくり返して卵の上にのせて出来上がりです。

ネギたっぷりがうれしいですね。

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お好み焼きの形が崩れるほどの大粒の牡蠣は濃厚で、ソースに負けていません。むしろバランスが取れています。1枚1,000円と、お好み焼きとしては決して安くありませんが、この牡蠣の大きさと量を考えると満足度は十分です。

隣のグループは一口食べるなり缶ビールを注文していました。ビールにも間違いなく合うのでしょう。

 

3月に向けてまだまだ日生の牡蠣の身は大きくなるとのこと。今からがカキオコを楽しむシーズンの本番です。

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安良田 (あらた) (備前/お好み焼き) - Retty

 

災害が強く意識される現在だからこそ広く読まれて欲しい。『地球の歴史』(鎌田浩毅著)

シンプルなタイトルのとおり、地球の歴史を上・中・下の3巻で解説する新書です。上巻は地球の誕生から、中巻は生命の出現から、下巻は超大陸の分裂と爬虫類の出現から現代、さらに未来予測までとなっています。

書店で軽く立ち読みして、下巻から購入することにしました。歴史とはいえどこからでも読み進められる構成になっている点、恐竜や人類が登場する身近な時代だと理解しやすい点を考慮したためです。

 

本書では、「長めのあとがき」から読むことを推奨します(私はどの本でもあとがきから読みますが)。数ページで地球科学という分野の特徴をのぞき見ることができます。

地球科学は自然科学の一分野だが、自然科学のなかで、これほど「再現性のない」自称を扱う分野も珍しいのではないだろうか。(pp.254-255)

 物理学の論理は、宇宙のどの場所でも、またいつの時代にも普遍的に成り立っていなければならない。これは自然科学最大の特徴で、誰が実験しても条件が揃えば同じ結論が導かれる。これに対し、地球科学では、宇宙に唯一無二の存在である地球を対象とすることで、現代物理学ではまだ説明できない現象も扱わなければならない。(p.255)

そもそも不可逆な現象を多数扱うものだから、理論の通りに進行することが少ない。言い換えれば地球科学は「例外にあふれている」という特徴を持つ。地球の歴史には思わぬ事件が多数登場するが、われわれ地球科学者は起きた現象をできるだけ正確に記述しようとする。(略)しかし、それがなぜ起きたのかという根源的な質問に答えられる場合は、実に少ない。(p.258)

こうした記述を読むと、因果関係を蓋然性の高さで説明する人文系の多くの分野では地球科学に親近感を持つのではないでしょうか。この親近感を得て本文に移ると、難しい専門用語も軽々と飛び越えて読み進められます。

 

下巻では、2億5000万年前から現代までの間、大陸が移動し続けていること、隕石衝突やたびたび起こる大規模噴火などが語られます。それらは気候を左右し、生物に大きな影響を与えます。ヒト出現以降、人間の生活を脅かすのであればそれらは「災害」と呼ばれるでしょう。

しかし、災害の前提にあるのは地球の活動です。個人や地域に降りかかってくる災害を考えるうえにあたり、マクロな視点での地球活動を知っておいてもいいように思います。地球レベルでの動向を踏まえると、各所で叫ばれている近い将来の災害(たとえば南海トラフ地震など)以外の災害の可能性も頭の片隅に置かざるを得ないし、起こるであろう災害に対してもやや冷静な目で見ることができるのではないでしょうか。

 

災害が強く意識されている今だからこそ、本書は広く読まれて欲しいと思います。

古代にはどうやって朱を得ていたのか。「古代の彩り」@徳島県立博物館

2016年末のエントリで次のように書いてしまったので、今年は地方の小さな展覧会の感想もなるべくアップしていきたいと思います。

大きく派手な展覧会よりも、地域性を重視し、館のサイズに応じた展覧会こそが、全国各地に博物館・美術館が存在することの意義だと思うからです。

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というわけで2017年最初に取り上げるのは、徳島県立博物館で開催していた「古代の彩り」です。大きな展覧会ではありません。

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日本列島で古代から用いられてきた「朱」。赤く塗られた弥生土器や、朱の付着した鏡(古墳の内部に敷き詰められた朱が付着したもの)の展示で、古代の朱との関わりを見せてくれます。

朱の原料は辰砂(しんしゃ)やベンガラといった鉱物です。昨年、目黒区美術館で開催された「色の博物誌」でも辰砂やベンガラは色材として並んでいました。今回徳島まで足を運んだのは、「色の博物誌」を観て色材に強く関心を持ったこともあります。 

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展示中盤には、弥生時代と同様の方法で岩礫から辰砂*1を得る実験のプロセスと結果が展示されています。辰砂を含む石灰岩の岩礫をサイズの異なる石器で粉砕し、さらに水簸(粉末を水に混ぜて石と水銀朱を分離する)の工程を経ます。展示資料と解説パネルで、石器の割れ具合や水簸実験の結果を比較して見ることができるようになっています。

この見せ方は歴史系と自然系の部門を有する博物館ならでは。鉄すら広く普及していない時代に朱を得ていた方法がよく理解できます。このパートは「古代の彩り」の売りのひとつではないでしょうか。

 

古代の彩り -徳島の朱-

会期 2016年12日3日(土)~12年25日(日)(終了しています)
会場 徳島県立博物館徳島県徳島市八万町向寺山)

阿南市若杉山遺跡は、日本列島で唯一、発掘調査によって弥生時代の辰砂(水銀朱の原料となる鉱物)を採掘していた鉱山跡であることが明らかになっている遺跡です。

この特別陳列では、若杉山遺跡をはじめ、近年、調査が進められている阿南市内の赤色鉱物採掘遺跡の出土品や、鮎喰川・吉野川下流域の集落や古墳から出土した水銀朱と関連する資料を展示し、赤色顔料の生産・流通・消費のあり方や自然科学的な分析といった様々な視点から、古代の朱に迫ります。

 徳島県立博物館 展示

*1:展覧会では粉末状になった辰砂を水銀朱と呼称していました。

「この先10年を研究者として生きるには、今が正念場」と言われて

「なだ君がこの先10年を研究者として生きるには、今が正念場」

先日、人づてに聞いた言葉です。

言葉を発したのはNさん。Nさんは大学などの研究機関に属していませんが、論文の質も数も十分(ただし正当には評価されていないような)という方です。

(以前、Nさんのことを話題にしたエントリはこちら)

knada.hatenablog.com

 

さて、私が自分の代表的な研究成果を挙げるなら、マイナーテーマながら概説書などでも主要先行研究として取り上げられている論文になります。ただし、この論文は10年前の発表です。

この10年間を振り返れば、興味関心がさまざまな方向に向き、それぞれの方向で論文を書いてきました。大学以来の研究テーマが壁にぶつかり、その壁を避ける道を探していたような気もしますが、結局、どれも体系立った研究にできませんでした。

科研費申請の業績欄を埋めるたび、この10年間にまともな研究成果を出せていないことを痛感します。

 

1年ほど前、しばらく関わる研究テーマを二つに絞り、最近、二つから一つにする覚悟を決めたところです。この研究でなんとか大きな果実を得たいと思っていますが、そのことをNさんも含めて広くは伝えていません。

 

こうした状況でのNさんの冒頭の言葉です。私がしばらく成果を出せていないことや、現状を打破するためにあがいていることがNさんには見えているのでしょう。勝負時は今、ということまで。

遠くから応援してくれていると解釈します。正念場を乗り切ります。

2017年に達成すること

元日なので、今週のお題「2017年にやりたいこと」に絡めて、2017年に達成することを。

 

1 新規論文1本投稿

今、準備している論文を仕上げて、この分野ではレベルが高いとされる雑誌に投稿します。

自分の中では「本命研究テーマ」なので、今後の研究はこの論文のデキにかかっています。この正月の間にデータ収集と分析の目処を立てておいて、年度末に向けての業務繁忙期を乗り切った後、本格的な執筆モードに入り、ゴールデンウィークには完成させる予定です。

 

研究面に限れば、2016年の成果は、論文0本(発表ベース)、口頭発表2本、リポート1本とふがいない1年だったので、2017年は踊り場から階段へ足を移さないと。

 

2 リジェクトされた論文の公表

先日、自信を持って投稿した論文があっさりとリジェクトされました。

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これまで関わりのなかった理系の学会に所属して投稿しました。先の広がりも見えていておもしろい研究テーマなのは間違いないのですが、現状で査読を通らないので、しばらくはこの研究を封印することにしました。

ただ、リジェクトされた論文については、修正のうえ早いうちにどこかで公表します。将来への布石にでもなれば。

 

3 大学院受験準備

今年中に最低限の学費はなんとか貯まりそうなので、来年度の入学を目指してどこかの大学院を受験します。

まだ受験先は決まっていません。仕事をしながらでも岡山から通える大学院を探し(ここが一番難しそう)、受験先に合わせて準備をします。

 

4 筋肉量を増やす

年々ひどくなっている肩こりの原因が筋力低下だと指摘されたため、昨秋からジムに通っています。ジムで筋肉量を測定してもらうと、肩だけではなく、足も著しく低下していることが判明。肩も足も筋肉量を増やします。

 

 

どれも一朝一夕には達成できないので、山を登るように少しづつ歩を進めていきたいと思います。