40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

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2018年 お気に入りの本3冊

2018年も12月30日になった。昨年に引き続き、今年読んだ本の中で特に気に入っている3冊を紹介したい。(自分の専門分野を除く) 『はじめての沖縄』(岸 政彦) 対象のモヤモヤを、モヤモヤのまま捉えようとするスタンスが岸政彦さんの魅力だと思う。 それは…

2017年 お気に入りの本3冊

2017年に読んだ本のうち、お気に入りの3冊を。 2冊は今年発行ではないうえ、1冊も文庫化された本なので「何を今さら」という声もあるかもしれないが。 断片的なものの社会学(岸 政彦) タイトルからは学術書寄りにみえるが、文章はかなり読みやすい。 読み…

これからも書く以上は定期的に読み直したい。『書くことについて』(スティーヴン・キング)

藤村シシンさんのこのツイートをTLで見た翌日の昼休み、書店で『書くことについて』を購入した。(元の本は『On Writing: 10th Anniversary Edition: memoir of the Craft』とのこと) 書くにしても話すにしても、言語化する作業に行き詰まったらこの本を読…

7世紀の永納山城を歩き、『夕凪の街 桜の国』を読み、くらしとごはんリクルで肉厚愛媛鯛のランチ@愛媛県西条市

7世紀に築かれた永納山城を歩く 愛媛に行く機会があったので、かねてから訪れたかった永納山城を歩いてきた。 7世紀、対馬から九州北部、瀬戸内海沿岸には朝鮮半島の技術を用いた山城(古代山城)が30基近く築かれた。築城目的は新羅・唐の侵攻への備えとさ…

災害が強く意識される現在だからこそ広く読まれて欲しい。『地球の歴史』(鎌田浩毅著)

シンプルなタイトルのとおり、地球の歴史を上・中・下の3巻で解説する新書です。上巻は地球の誕生から、中巻は生命の出現から、下巻は超大陸の分裂と爬虫類の出現から現代、さらに未来予測までとなっています。 書店で軽く立ち読みして、下巻から購入するこ…

2016年 お気に入りの本 3冊

昨日の記事で言及した展覧会に引き続き、2016年に読んだお気に入りの本3冊を紹介します。一般書に限ってですが。 『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著) まず、私のような会社勤めの傍ら細々と研究を続ける人間に「在野研究者」という呼…

ローカルな民俗芸能からも導かれる生き生きとした中世の姿 『乱舞の中世』(沖本幸子著)

サントリー学芸賞受賞のニュースを見て知った本書。数日後、最も興味を惹かれた本書を購入して読み終えました。専門外の人間でも途中でつまづかずに読み進めることができるのは、著者の文章力のおかげでしょう。 「白拍子」「乱拍子」といった、これまで実態…

子ども版ライフハック本。自分が子どもの頃に読みたかった。『時間の使い方』(旺文社)

今週のお題「プレゼントしたい本」というか、最近子どもにプレゼントした本です。その本とは、春から結構話題になっている「学校では教えてくれない大切なこと」シリーズの『時間の使い方』。 高学年になった子どもは、帰宅時間も遅くなり、平日に家で過ごす…

京都をよく知る人こそ引き込まれる『京都の凸凹を歩く』(梅林秀行著)

ブラタモリに何度も出演する著者が、地形に残る過去の京都を読み解くのが『京都の凹凸を歩く―高低差に隠された古都の秘密』です。祇園、御土居、巨椋池など7か所が地図や写真を交えて紹介されていますが、地域のチョイスが絶妙で、京都をよく知っている人こ…

行き詰まった研究者こそ読むべき『アオイホノオ』(島本和彦著)

『アオイホノオ』を5巻まで買い、帰宅するなり勢いで購入巻すべてを読んでしまいました。高校卒業以後、あまり漫画を読まなくなり、コミックもほとんど買ったことがないにも関わらず。なのに『アオイホノオ』を購入してまで読んだのはこれが原因です。 toget…

市場設計に腐心してきた歴史をわかりやすく。『マーケット進化論』(横山和輝著)

Twitterで存在を知って手に取ったのが『マーケット進化論 ―経済が解き明かす日本の歴史―』です。 本書のおおまかな内容は冒頭に一文で示されています。 「鎌倉・室町時代から昭和初期まで、市場の機能を活かす市場設計を通じて、日本は経済発展を実現した。 …

それぞれの社会に適した経済のしくみがある『「その日暮らし」の人類学』(小川さやか著)

待っていた本をようやく購入、夕食後に最後まで読んでしまいました。 『「その日暮らし」の人類学』(小川さやか著)は、「Living for Today―その日その日を生きる―」をキーワードとして、経済、社会の状況をしくみを問い直す新書です。 以下はプロローグで…

遺構とモニュメントの関係性を考える『「戦跡」の戦後史』(福間良明著)

本書は、広島、沖縄、知覧の3か所の比較を通して「戦跡」を考えるという内容です。戦跡を「遺構」と「モニュメント」に分け、「アウラ」の概念を用いながらその相違や関係性の変化を分析しています。以下、「序章」のアウラを取り上げた箇所を引用します。 …

個性的な九州諸都市を鳥瞰図で楽しむ『美しき九州』(益田啓一郎編)

ページをめくってもめくっても色とりどりの鳥瞰図。とにかく掲載点数が多いのです。 先日来、「大正広重」と呼ばれた鳥瞰図絵師、吉田初三郎に関する資料を読んでいます。 knada.hatenablog.com 『美しき九州 「大正広重」吉田初三郎の世界』は、福岡を拠点…

精緻な分析にカラフルな挿図『吉田初三郎の鳥瞰図を読む』(堀田典裕著)

大正から昭和初期にかけて量産された美しい鳥瞰図。中心部が強調され、周辺は魚眼レンズでのぞいたような湾曲した独特の構図で、日本各地の風景が描かれています。手がけたのは吉田初三郎という人物で、当時「大正の広重」とも呼ばれていました。 初三郎の鳥…

社会実験である地域アートには検証が必要では?『地域アート』(藤田直哉編著)

今朝起きて、ネットに繋いでみるとかなり話題になっていたこの記事。記事を読んで今日のミッションが決まりました。仕事帰りに書店に立ち寄ることです。 bylines.news.yahoo.co.jp 先月刊行された『地域アート 美学/制度/日本』は、私も仕事で関わったことの…

12島の扉を楽しむ『瀬戸内国際芸術祭2016公式ガイドブック』

3月20日から始まる瀬戸内国際芸術祭2016。香川と岡山の12島が主な会場です。 私も仕事を兼ねて会場を訪れることになるため、先日発売された公式ガイドブックを買ってきました。 ガイドブックらしく、メインとなる作品や地図、飲食店情報などをギュウギュウに…

宮尾登美子の小説で高知を味わう『鬼龍院花子の生涯』『櫂』

今週のお題「好きな街」、私は高知です。 仕事の取材で定期的に行きますが、魚や野菜は安くておいしく、海、山、川と自然溢れる風景を堪能できます。また、天守を頂く高知城の周辺に広がる高知市街地は、町割りなどに城下町の面影を残していて路地散策も楽し…

大学院に進む必要はあるのか?『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著)

書店に立ち寄るために早めに仕事を切り上げて、ようやく購入できた『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著)。夕食後、読み始めて一気に巻末に達しました。 前回のエントリで購入前の本書への期待を書いたのですが、著者のTwitterでツッコ…

在野研究者への後押し『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著)

知人にとある本をすすめてもらいました。『これからのエリック・ホッファーのために―在野研究者の生と心得』(荒木優太著)です。 在野にいながらも実績を残した研究者16人を紹介する本で、著者のサイトに目次が掲載されています。 16人のうち半数近くの人の…

装幀も美しい『絵はがきの別府』(松田法子著)

今日は休日だったので、なかなか進まない論文を書きつつ、その合間に休憩がてら読んでいたのが『絵はがきの別府』(松田法子著、古城俊秀監修)という本です。 別府の近代史を理解できる 数万枚に及ぶ個人コレクションの絵はがきを基に近代の別府を概観する…

『新・観光立国論』の「稼ぐ文化財」という提言について文化財関係者はどう考えているのか?

今さらながら『新・観光立国論』(デービッド・アトキンソン著)を読みました。 文章は明快で、裏付けとなる図表も多く、読みやすくて理解しやすい内容になっています。1時間もあれば一通りは読むことができるでしょう。 本書は、外国人観光客にいかに日本滞…