40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

「養蚕機織図屏風」には養蚕史的価値もありそう。「高松藩・狩野派!」@高松市歴史資料館

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高松市図書館で原稿用の資料を探したついでに、高松市歴史資料館で「高松藩狩野派!―御用絵師とその周辺―」を観てきました。高松市の歴史資料館と図書館は同じ建物の中にあります。

ちなみに、岡山から高松に出かけての片道は約55分、1,510円です。地方の県庁所在地間としては岡山と高松はかなり近い(時間的にも料金的にも)のです。

www.takamatsu-webmuseum.jp

 

展示スペースを大きく占めていたのは、狩野常眞「養蚕機織図屏風」、狩野厚信「海浜春秋図屏風」の2点。

 

狩野常眞「養蚕機織図屏風」

養蚕は狩野派がよく扱ったテーマと聞きますが、昨年末に『蚕』(畑中章宏著)を読んで以来、養蚕関連のものに立て続けに出会っていたのでこの屏風を見た瞬間に驚きました。蚕に引き寄せられているようです。

knada.hatenablog.com

「養蚕機織図屏風」では、中華風の建物の中で中華風の衣装をまとった人物が桑の葉を採取するところから織物になるまでを描いています。建物や衣装は中華風ですが、丹念に見ていくと蚕を育てる籠や部屋の隅に置かれた瓶は和風であり、養蚕の道具は当時のものを表現している可能性があります。養蚕史の資料的価値も認められるのでは。

 

狩野厚信「海浜春秋図屏風」

「海浜春秋図屏風」はどこの海岸を描いているのか不明とキャプションにありましたが、湾内に漕ぎだした小舟で打瀬網の漁の様子や、小規模な製塩が見られることから、瀬戸内海をイメージしているのではないでしょうか。

海岸沿いに奇岩が描かれているのも気になりましたが、こちらはまだ頭の中でモヤモヤ中です。そのうち何かとつながるような気がします。

 

いずれも個人蔵なので、地元の方でも観られる機会は多くないかもしれません。前期・後期ですべての資料が入れ替わるらしいので、鑑賞される方は前期の間に。

 

高松藩狩野派!―御用絵師とその周辺―」

江戸時代に幕藩体制が成立して以降、徳川将軍家の御用絵師として狩野派の絵師たちが重用されたことから、のちに江戸狩野と称される狩野探幽を中心とする狩野派は、幕末まで大きな影響力をもつ一大絵師集団としての地位を確立しました。特に探幽三兄弟から始まる狩野家(鍛冶橋・木挽町・中橋・浜町)は、奥絵師として徳川幕府に直属し、狩野派の中枢部として別格の扱いをうけていました。高松藩は徳川家の親戚筋にあたる松平家が治めていたこともあり、狩野派の宗家とされる中橋狩野の流れをくむ狩野常眞が、高松藩の初代の御用絵師として登用されました。それ以降も高松藩では狩野派の画家が御用絵師に登用されたという記録が残されており、幕末期の狩野永笑まで、その流れは脈々と続いていたとされています。そして、歴代の高松藩の藩主やその一族の中には、自ら筆を取り書画に親しむ一面をもった人物もおり、優れた作品を残していることから、藩主周辺や高松城下でも書画などの芸術文化に高い関心を抱く風潮がみられたようです。今回の展示では、将軍家御用絵師となった江戸狩野の流れを受け、高松藩の御用絵師として活躍した狩野派の絵師たちの作品を中心に紹介します。

場所高松市歴史資料館 香川県高松市昭和町1-2-20

期間:前期 2016年4月23日(土) ~5月22日(日)/後期 2016年5月28日(土)~6月26日(日)(前期・後期で作品をすべて入れ替えるため、5月24日~5月27日は企画展示室を閉室します。)

休館日:月曜日

開館時間:午前9時~午後5時

観覧料:大人200円 大学生150円 高校生以下は無料