ぎっしり並んだ資料は、学芸員の物部への想いの表れでしょう。
「いざなぎ流の里・物部 ―神々と精霊の棲む村―」を観てきました。会場の高知県立歴史民俗資料館に着いて中に入ると、今日は観覧料無料とのこと。「歴民の日」という特別な日だったのです。
午前中はワークショップもあり、結構な人数でにぎわっていました。地方の博物館や美術館がにぎわっている様子は嬉しいですね。
「いざなぎ流」とは、高知県の山間部、旧物部村(現在の香美市)に伝わる民間信仰です。「太夫(たゆう)」と呼ばれる人が祈祷や神楽を行うのですが、その種類は多数にのぼり、それらは口頭で伝承されてました。
NHKの番組では、その一部を見ることができます。
今回の展覧会では、祈祷に使う御幣や仮面が数多く展示されています。物部には、多くの神がいて、神によって御幣の形が異なり種類も増えるのです。御幣は太夫が紙を切って作る(という言葉は正しくないかもしれませんが)のですが、切り方を伝承するだけでも相当なものです。
裏を返せば、それだけ物部でいさなぎ流の祈祷や神楽が必要とされてきたということでしょう。
展示されているのは、いざなぎ流関連の資料だけではありません。
たとえば、飢饉に備えて屋根裏に保存され続けてきた俵いっぱいのヒエ。観覧者に問いを迫ってきます。現代の日本で食料が不足する事態をどれだけ考えているのか、と。
この展覧会は、いざなぎ流を切り口に、風景写真や近年まで使ってきた民具などで物部という場所を語っています。物部への学芸員の強い想い入れを感じます。
その一方で、観終わってから疑問が湧いてきます。物部にいざなぎ流が必要とされ続けてきたのはなぜ?
香美市物部町には、陰陽道・修験道・神道などが混交した、いざなぎ流と呼ばれる民間信仰が伝わっています。神々をかたどったユニークな形の御幣や土俗的な仮面、神の由来を物語る祭文、豊富で多様な神楽や祈祷のテクニックが日本全国はもちろん海外からも注目を集めています。今回は、いざなぎ流の最新の研究成果に加えて物部の歴史や民俗を紹介し、地域文化の伝承について考えます。
期間/2016年4月29日(金・祝)~6月26日(日) 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)