「物の声を、土の声を聴け」のコピーに惹かれて、京都文化博物館で「アートと考古学」展を観てきました。ポスターのフォントがいいですね。
土の中から出土する土器や石器を対象とする考古学、それをアートという切り口でみせる展覧会です。アートというよりは、出土した物を考古学ではない視点で捉えた展覧会だと感じました。想像以上におもしろく、刺激的でした。
会場は大きく4つのパートで構成されています。
最初のパートでは、近世以前の絵巻や絵図を用いて、人々が古い物に対してどう接してきたかを紹介します。展示資料は、物質に対する認識を考えるうえで興味深いものばかりです。
例えば、弥生時代の銅鐸を掘り出すシーンが描かれる「石山寺縁起絵巻」。弥生時代に埋められた物を掘り出して寺の由緒として語る―人間は時代を越えて銅鐸に2つの意味を与えるのです。この銅鐸が現在にも残っており、博物館などに展示されていれば、観覧者に観られるという意味も付与されます。学術的な資料、教育的な資料という意味もあるでしょうか。
3番目のパートで並んでいるのは京都から出土した土器や瓦などです。さすが平安京、各地のやきものが運ばれてきたことがよく分かります。いやいや、ここで伝えたいのはそういったことではないでしょう。作家視点で土器や瓦がどう見えるのか、ということが主眼です。
作家が関心を示したのは、割れた土器の破片や、破片を復元しようとした状況のようです。土器の破片の足りない箇所を埋めるために補填された白い石膏はなかなかおもしろいです。考古学者は、あくまで土器本来の形を復元しようとして破片に石膏をくっつけています。しかし、結果として、平安時代の人のやきもの+現代の考古学者の石膏という「作品」が出来上がっでいるのです。考古学者は意図していないにも関わらず。
やはり、視点が変われば物の意味が変わるという好例でしょう。最初のパートでは変化の軸が時間でしたが、こちらでは人、というより人の属性になっています。
物とは一体何なのか。物に対する認識はどう変化するのか。
いろいろと考えさせられる、刺激的な展覧会でした。
「アートと考古学」は、考古学をより多くの人々に開放し、その楽しみ方を再発見したり、もっと魅力や価値を高めようとしたりする運動の一つで、とくに芸術(家)と考古学(者)のコラボレーションによる様々な取り組みを指します。近年、このアートと考古学という異色の出会いが、文化遺産の世界で新たな魅力や価値観を創造しつつあります。いまや世界的潮流となったこのアートな動きから、どんな作品が生み出され、どんな新しい楽しみ方が提案されているのでしょうか。本展では、こうした世界の動きを踏まえつつ、京都を中心とした「アートと考古学」の取り組みをご紹介します。
会期:2016年7月23日(土)~9月11日(日)
休館日:毎週月曜日
開館時間:10:00 ~ 19:30