40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

行き詰まった研究者こそ読むべき『アオイホノオ』(島本和彦著)

アオイホノオ』を5巻まで買い、帰宅するなり勢いで購入巻すべてを読んでしまいました。高校卒業以後、あまり漫画を読まなくなり、コミックもほとんど買ったことがないにも関わらず。なのに『アオイホノオ』を購入してまで読んだのはこれが原因です。

togetter.com

(あえて内容には触れません。このTogetterを読むと必ず『アオイホノオ』を手に取り、『シン・ゴジラ』を観に行きたくなるです)

 

島本和彦氏と言えば、私にとって『炎の転校生』の記憶しかありません。30年前の小学生にとっては、少し背伸びしなければ届かない感の作品が多かったサンデーに連載されていました。『うる星やつら』の大ファンだった近所のお兄さんの家に上がり込み、そこで読むのがサンデーであり、『炎の転校生』でした。

ただ、『アオイホノオ』については、後述の友人が折々に語っていたうえ、一昨年のドラマが話題だったので、タイトルとおおまかな内容は知っていました。しかし、実際に読んだのは今日が初めてです。

以下、ゲッサンWEBの作品紹介から引用します。

1980年代初頭。大阪にある大作家芸術大学1回生の焔燃は、「漫画家になる!」という熱い情熱と野望を胸に抱いて日々を過ごしていた。自分の実力には根拠のない自信を強く持っているが、アニメ業界にも興味があり、自分の進むべき道を模索中の焔。そんな焔は、夏休みの間際に一つの決断をする。それは、東京の出版社に持ち込みに行くこと。ますます熱くなった熱血芸大生・焔燃の七転八倒青春エレジーが再び始まる!

gekkansunday.net

(1話だけですが、サイトで読むことができます)

 

主人公・焔燃(ホノオモユル)が、周囲の才能あふれる人物や出来事に何度も打ちのめされ、それでもその現実を受け入れらず、なんとか這い上がろうとするのですが、ここに強く引きこまれます。

クリエイターと呼ばれる人たちが、このマンガを賞賛するのはよく分かる気がします。友人のイラストレーター(大阪芸術大学卒)はこの漫画をバイブルとして移住先のフランスに持って行きました。

 

現在の私は、デザイナーやカメラマン、イラストレーターといった方々と一緒に仕事をする機会に恵まれ、友人関係も築いています。こういったクリエイターの方々と付き合いの増えてきた10年ほど前、実は研究者も「表現者」なのでは、ということを考えるようになったのです。作品はもちろん論文や書籍。アイディアを形にして世に問う―

対象者は限定され、大半の作品は商業ベースに乗らず、評価者も内輪、という点は狭い世界での話にはなりますが。それでも、クリエイターの友人たちと話をしていて意識は共通するものがあり、また彼らから学ぶ姿勢も多々あります。いい作品に触れ、常に着想を探る等、等々。

 

持論どおりであれば『アオイホノオ』は日々論文に向かう研究者(天才と呼ばれる一部の人を除いて)にとっても共感が得られるはずです。20年近く続けてきた研究テーマに行き詰まり、今さら方向転換を図り、数年後の大学院進学を目指そうとする私にとっては特にそうです。

打ちのめされるともっともらしい言い訳をしてベッドに寝転がるモユルに向かって、「そうじゃないだろ!」と思わず叫んでしまいますが、それはそのまま今の自分に向けていることに気づきます。これで気づくのも情けないですが、気づいて熱くなった心が冷めてきたら『アオイホノオ』を読み返すことにします。

いつでもどこでも読めるKindleにすればよかったと少し後悔……。