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独り身の40代、大学院進学と博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

京都をよく知る人こそ引き込まれる『京都の凸凹を歩く』(梅林秀行著)

ブラタモリに何度も出演する著者が、地形に残る過去の京都を読み解くのが『京都の凹凸を歩く―高低差に隠された古都の秘密』です。祇園御土居巨椋池など7か所が地図や写真を交えて紹介されていますが、地域のチョイスが絶妙で、京都をよく知っている人こそ新しい発見があるように思います。このあたりは京都の出版社だからかもしれません。

地形の高低差は、よほどはっきりしないと写真では伝わりにくいものです。そこをフォローするのがカシミール3Dなどで製作した立体的な地図に加えて、近世地誌、絵図、小写真といった資料です。歴史的資料の豊富な地域ならでは、でしょう。

 

 

現在の地形から過去を読み解くのは、地理学や地質学のみならず、考古学、歴史学民俗学社会学といった分野でも用いられる方法です。もちろん、分野により対象となる時間は異なりますが。かくいう私も、フィールドワークを重ねるうちに知らず知らずのうちに同様の手法を身に付け、研究に活かす場合もあります。なので、積み重なった過去が結果として現在の地形や地図となっている、という視点は私にとって目新しいものではありませんでした。

 

ところが、以前、梅田の紀伊国屋で平積みになっていた『アースダイバー』(中沢新一著)を何気なくめくった際に驚きました。『アースダイバー』は、現在の東京の地形(特に深い谷が目立つ都心)に過去の東京の姿を見出すことを出発点とし、それを中沢節で解釈するというものです。自分にとっては「日常の」見方が本になっているのです。

私の周囲の人たち(研究者ではない人たち)は、この本が斬新であると高く評価していました。彼ら彼女らに、東京に限らず、どこでも同じような視点で見ることができる、と歩きながら解説すると、たいそう驚き、周囲の景観に興味を持ってもらえたのをよく覚えています。

 

それから10年以上経て出版された『京都の凸凹を歩く』は、地形と資料の突き合わせもしっかりとされ、可能性は可能性として記述されている親切な内容です。この点では『アースダイバー』と次元が違います。本書のような「王道的」な本が書店に並び、売れている(私が購入したのは第3版です)現状は喜ぶべきことでしょう。ブラタモリによって地形と過去との関係が市民権を得つつあるのかもしれませんが。

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