昨晩から私のTwitterのタイムラインは学芸員批判をした地方創生相の発言で荒れている。
地方創生相の学芸員や専門家への理解が足りない、といった意見は他の方に任せるとして、なぜ「学芸員の人たちも観光マインドを持って」(リンク先の動画参照)という発言が出るのか、政府や省庁のサイトを巡ってまとめてみた。
結論から言えば、この発言部分は大枠として政府の方針に沿っていることになる。(地方創生相が、学芸員の人たちに「観光マインド」がないとしていることを前提に)
新・三本の矢
安倍政権の経済財政政策の「新・三本の矢」のうち、「新・第一の矢」は「希望を生み出す強い経済政策」となっている。
日本再興戦略会議2016
「新・第一の矢」には従来の「三本の矢」が含まれる。従来の「第三の矢」は「民間投資を喚起する成長戦略」で、この具体的な内容は「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)で示されている。
「これまでの成果と今後の取り組み」というポンチ絵資料の25ページ目に文化財の項目が出てくる。以下に一部引用する。
「明日の日本を支える観光ビジョン」等に基づき、観光立国の実現に向けた取組を総合的・戦略的に推進
つまり、文化財を活用した観光資源を地方創生の基礎とする、ということである。
明日の日本を支える観光ビジョン
上記資料で触れられている「明日の日本を支える観光ビジョン」は観光庁が策定したもの。
以下、「3つの視点と10の改革」というポンチ絵資料の1ページからの引用。
「文化財」を、「保存優先」から観光客目線での「理解促進」、そして「活用」へ
・2020年までに、文化財を核とする観光拠点を 全国で200整備、わかりやすい多言語解説など 1000事業を展開し、集中的に支援強化
このビジョン構想会議には、『新・観光立国論』『イギリス人アナリスト 国宝を守る』の著書であるデービッド・アトキンソン氏も委員として名を連ねている。ビジョンで示された内容はアトキンソン氏の主張に近い。
京都宣言
こちらは観光から少しずれるかもしれないが、「京都宣言」からも引用しておく。文化財に対する基本的な考え方は、日本再興戦略2016などと近いだろう。
これからの文化行政については、我が国の文化の一層の向上に向け、文化財の 保護・活用や文化活動への支援、人材育成等の充実を図るだけでなく、文化を資 源として捉え、文化への投資が国際協力、新たな社会への発展、経済成長等にも つながるよう転換させる。