2017年に読んだ本のうち、お気に入りの3冊を。
2冊は今年発行ではないうえ、1冊も文庫化された本なので「何を今さら」という声もあるかもしれないが。
断片的なものの社会学(岸 政彦)
タイトルからは学術書寄りにみえるが、文章はかなり読みやすい。
読みやすいが、内容は相当に深い。
読後、社会とは白黒明瞭に分けられるものではなく、曖昧な中を誰も手探りでさまよって迷っているようなものだということを強く感じた。
いろんな人に読んで欲しくてこの本を何人かに貸したが、数人は「手元に置いておきたい」ということで別途購入。
こんなことは初めての経験である。
ちなみに、立命館大学の大学院説明会で著者の岸政彦氏をお見かけして、ひとりテンションが上がってしまったのはこの本を読んだ直後だったから。
椿の海の記(石牟礼道子)
私はこの本の存在を知らず、書店で偶然見かけてその場でパラパラとめくって即購入を決断した。
なにより文章が美しい。
戦前の水俣の豊かな自然や人々の営みがいきいきとありありと描かれている。
水俣病には触れられない(それ以前の時期なので当然だが)にもかかわらず、ひるがえってそれが、後に発生する水俣病(メチル水銀化合物による中毒性の神経疾患)の悲惨さをより強く読者に想像させることになっている。
高校生くらいに読んでいれば、と後悔。
ちなみに日本窒素肥料の工場(後に水俣病の原因となる)に勤めるサラリーマンの姿も描かれている。
江戸の花鳥画(今橋理子)
絶版になっていた本が待望の文庫化。
学術書のわりに読みやすく、謎解きのような感覚で読み進められる。
絵画史の分野だが、文献も駆使しながら「博物図譜」成立の背景に迫るプロセスは思わず唸ってしまう。
元の本が出版された際に相当な反響(賛同も批判も)があったことは、専門外の人間にも容易に想像できる。
内容とは別に「いいな」と思うのは、シンプルだが対象としているものを明瞭に表すタイトル。
これはクリーンヒット。
うしろめたさの人類学 (松村圭一郎)
一昨日購入して今年中に読めないかもしれないので、番外編という扱いで。
読み始めたばかりだが、幅広いテーマをするすると読ませてくれる。
各所で絶賛されているのは納得。(店員さんにも勧められた)
著者のトークイベントに行けなかったのが残念……。
(仕事の忙しさを言い訳に)前年に比べて読んだ本の冊数はかなり少ない。
2018年は、もう少しだけでも多くの冊数を、そしてより幅広い分野の本を読みたい。