2023年も終わりに近づく頃、博士論文を提出した。完成までに6年近くを費やした。
途中、特に後半は何十回もあきらめかけた。断念しかかった要因は大きく分けて二つある。一つは自分の研究能力の限界を思い知らされたこと。これだけ時間をかけてもこの程度の成果しか上げられないのか、という絶望感である。二つ目は、春秋の雲一つないような晴天の休日、それでも進むか進まないか分からない原稿のためにパソコンに向かわなければならないこと。休日ごとに部屋にこもり続けるのは病みそうだった。
それでも、ここで諦めると一生後悔するだろうと思ってなんとか形にした。
終盤の1年間は研究に集中できる時間を捻出するためにそれまでの生活スタイルを見直した。平日の仕事終わりのジムに行く時間帯、休日の朝の過ごし方、パソコンに向かう場所などである。
これらの見直しのうち、振り返って一番効果があったのは、SNSを断つことだった。
誰かの投稿に感情や時間を持っていかれるのが、自分にとっては一番の障害だったのである。この間、自分の社会への関心が薄れているのは間違いなく、社会と切り離された研究でいいのかという疑問もある。これからのSNSとの付き合い方はどうするべきだろうか?
博論を完成させるとどれほどの達成感を得られるのかと期待もしていたが、達成感は欠片ほども無い。やり残したことが多すぎるのである。
博士号はスタートライン、と言われるのはこうした所以なのかもしれない。