独り身の40代、大学院進学と博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

特別展「茶の湯」で茶器を堪能し、考古展示室で人物埴輪に圧倒される@東京国立博物館

まださほど暑くなっていなかった5月、特別展「茶の湯」を目的に訪れた上野の東京国立博物館。この日は別の用件が入ってしまい、博物館に着いたのは閉館まで2時間強という時間だった。

f:id:knada:20170602213756j:plain

f:id:knada:20170602213815j:plain

 

特別展会場は敷地奥の平成館。ここに入るのは初めてのような気もする。展覧会の性質か和装の人も少なくない。

f:id:knada:20170602213829j:plain

 見知らぬ人と感想を述べ合ってしまう展覧会

茶の湯」では室町時代から江戸時代を中心に近代までの茶器が展示されており、メインは侘茶の誕生から千利休による侘茶の完成だろう。千利休登場までの流れと、千利休以後の展開といったストーリーのように見受けられる。

通常の展覧会であれば1点でも集客できるレベルの茶器がこれでもかと並ぶ。それぞれをじっくり観察してまわると見終わるころには疲労困憊である。それでもほとんどの観覧客は詳細に茶器を観ている。小さな資料が大半のため、少し人だかりができると隣の人と近づいて観ざるを得ないが、見知らぬ人と目の前の資料を前に一言の感想を述べ合う稀有な状況に落とし込まれるのもこの展覧会ならではかもしれない。

 

信長の野望」ファンはその世界の一端に触れることができる

私が茶器の存在を知ったのは、中学生の時にプレイした「信長の野望 武将風雲録」だった(1990年発売)。戦国期を舞台にした有名SLGの4作目で、当時、PC-8801を持っていた友人の家に上がり込んで遊んでいた。

武将風雲録」では、配下武将の忠誠心の上昇や茶会の開催に茶器が用いられるというシステムとなっていた。戦争を前面に押し出した戦国期のゲームに登場した茶器は新鮮で、限られた数しかない茶器のコレクションに腐心したことも思い出す。

茶の湯」で何十点もの戦国期の茶器に囲まれると「信長の野望」の一部を仮想体験しているような気になる。戦国期の城館跡に立つのとはまた違った体験である。これだけの茶器が集まる展覧会はこの先数十年は開催されないだろうから、「信長の野望」ファンはこの展覧会で茶器システムの一端に触れるべきだと思う。

なお「武将風雲録」に登場した茶器の一部は「茶の湯」に展示されている。

 

予習は『へうげもの』で

この展覧会の中核をなす侘茶の誕生から完成は、古田織部を主人公とする『へうげもの』(山田芳裕著)の舞台そのものである。『へうげもの』は史実をベースにしたフィクションであるが、戦国武将の茶器への視点や、茶の流れと茶器の変遷がこれほどわかりやすい作品はないように思う。

今回、展覧会を観る前に『へうげもの』を読んでいったのだが、展覧会のストーリーを瞬時に把握できた。「茶の湯」は6月4日までの会期だが、可能であれば観る前に『へうげもの』(特に5巻あたりまで)で予習することを強くおすすめする。

ミュージアムショップで『へうげもの』を販売してもいいように思うが……。

 

特別展「茶の湯

12世紀頃、中国で学んだ禅僧によってもたらされた宋時代の新しい喫茶法は、次第に禅宗寺院や武家など日本の高貴な人々の間で浸透していきました。彼らは中国の美術品である「唐物」を用いて茶を喫すること、また室内を飾ることでステイタスを示します。その後、16世紀(安土桃山時代)になると、唐物に加えて、日常に使われているもののなかから自分の好みに合った道具をとりあわせる「侘茶」が千利休により大成されて、茶の湯は天下人から大名、町衆へより広く普及していきました。このように、日本において茶を喫するという行為は長い年月をかけて発展し、固有の文化にまで高められてきたのです。

本展覧会は、おもに室町時代から近代まで、「茶の湯」の美術の変遷を大規模に展観するものです。「茶の湯」をテーマにこれほどの名品が一堂に会する展覧会は、昭和55年(1980)に東京国立博物館で開催された「茶の美術」展以来、実に37年ぶりとなります。
各時代を象徴する名品を通じて、それらに寄り添った人々の心の軌跡、そして次代に伝えるべき日本の美の粋をご覧ください。

会期:2017年4月11日(火) ~6月4日(日)

会場:東京国立博物館 平成館

chanoyu2017.jp

 

考古展示室では埴輪の造形美を観ることができる

茶の湯」の会場を出た1階の大きなソファでは多くの人が休憩している。その付近にある考古展示室に入る人は残念ながら多くはないが、ここでは造形美にすぐれた、人物、家、鶏、馬などの埴輪を観ることができる。

これらの埴輪は、5〜6世紀を中心に制作されたものだろうが、この時期の人物の服装や髪型をビジュアルで理解できる限られた資料である。平たく結わえられた髪、前綴じの服、玉を連ねた首飾り、いれずみと思われる表現、頬を覆う兜。

古代〜中世の絵画資料に表現される人物との違いは、人物を彩る服装や髪型がそれぞれの社会の規範によることを示しているのだろう。

f:id:knada:20170602213849j:plain

f:id:knada:20170602213905j:plain 

f:id:knada:20170602214226j:plain

f:id:knada:20170602214142j:plain

f:id:knada:20170602214237j:plain