40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

研究成果を広く伝えるためにはコミュニティ間の関わりが重要では

 先日、京都で開催中の「アートと考古学」展を観覧し、エントリをアップしました。刺激的な内容で楽しめる展覧会です。

この 「アートと考古学」展について、昨日の日経新聞のサイトで取り上げられていました。以下、一部引用します。

www.nikkei.com

「日本の考古学は、研究の成果を広く伝えることにまで手が回らなかった」と語るのは各会場のコーディネーターを務める画家、安芸早穂子氏。教科書や展覧会などで復元図を描いてきた経験から「古代のイメージについて学者は正確さを厳密に求めがちだが、バラエティー豊かなほうが良い。より多くの共感を得るにはアーティストとの連携が必要」と指摘する。

 

研究者コミュニティと他のコミュニティ

日本の考古学者が研究の成果を広く伝えることを怠ってきたかどうかは分かりません。

 

考古学に限らず、世の中に大きなインパクトを与える重要な研究や、メディアに取り上げられやすい派手な研究を除けば、成果が一般の人たちに知られることは多くないでしょう。

会社勤めをしながらプライベートで研究をしている私は、アカデミックな世界に属していない割には大学教員との付き合いもある、世間では少数派の人間だと思います。その私が感じるのは、研究者や専門家と呼ばれる人たちの多くが、それ以外の人たちと社会で関わることが少ない点です。

しかしそれは当然です。現在の社会は限られた地理的空間でも、いくつもののコミュニティがレイヤーとして存在しており、一人の人間が重点的に属することができるコミュニティは限られます。研究者は研究が本分であり、研究に関わるコミュニティに滞在する時間が長かれば長いほど、他のコミュニティとの関係は薄くなってしまいがちです。

 

研究成果を広く知ってもらうために、伝えることを得意とするメディアや広告、アートの分野の力を借りることは「アリ」だと思います。ただ、そういった分野のコミュニティと研究者コミュニティの接点は乏しいのが現状でしょう。

この現状を打破するのであれば、重要なのは各コミュニティがレイヤーになっていることです。

 

「アートと考古学」展はなぜ成功しているか

「アートと考古学」展は成功した試みだと思いますが、そのカギは京都という土地にあると私は見ています。京都は京都大学をはじめとする大学が多数あり、それだけ研究者も確保されています。かつ、関西の中では作家やクリエイターといった人たちが多数いる地域です。私の友人や知人にも京都在住で活躍している作家やクリエイターが何人かいます。この点は芸術系の大学が複数あることも大きいのかもしれません。

京都は都市部の割には中心部の面積は広くはなく、ここに研究者や作家、クリエイターのコミュニティがレイヤーとして存在していれば、少しのきっかけでコミュニティ間の接続が可能です。

 

地方こそ研究成果を広く伝えることが可能では

その意味では、実はコミュニティの数が膨大で空間も広くなる東京のほうが、伝えることは難しいのかもしれません。

一方、研究者やクリエイターの数が少ないというハンデはありますが、地方では空間が限られている分、コミュニティ間の接続のハードルは低いはずです。地方こそ研究成果を広く伝える試みが可能なはずです。

できれば、私のような人間が触媒になれれば、と常々思いながら仕事に向かっているつもりですが。

knada.hatenablog.com