独り身の40代、大学院進学と博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

災害が強く意識される現在だからこそ広く読まれて欲しい。『地球の歴史』(鎌田浩毅著)

シンプルなタイトルのとおり、地球の歴史を上・中・下の3巻で解説する新書です。上巻は地球の誕生から、中巻は生命の出現から、下巻は超大陸の分裂と爬虫類の出現から現代、さらに未来予測までとなっています。

書店で軽く立ち読みして、下巻から購入することにしました。歴史とはいえどこからでも読み進められる構成になっている点、恐竜や人類が登場する身近な時代だと理解しやすい点を考慮したためです。

 

本書では、「長めのあとがき」から読むことを推奨します(私はどの本でもあとがきから読みますが)。数ページで地球科学という分野の特徴をのぞき見ることができます。

地球科学は自然科学の一分野だが、自然科学のなかで、これほど「再現性のない」自称を扱う分野も珍しいのではないだろうか。(pp.254-255)

 物理学の論理は、宇宙のどの場所でも、またいつの時代にも普遍的に成り立っていなければならない。これは自然科学最大の特徴で、誰が実験しても条件が揃えば同じ結論が導かれる。これに対し、地球科学では、宇宙に唯一無二の存在である地球を対象とすることで、現代物理学ではまだ説明できない現象も扱わなければならない。(p.255)

そもそも不可逆な現象を多数扱うものだから、理論の通りに進行することが少ない。言い換えれば地球科学は「例外にあふれている」という特徴を持つ。地球の歴史には思わぬ事件が多数登場するが、われわれ地球科学者は起きた現象をできるだけ正確に記述しようとする。(略)しかし、それがなぜ起きたのかという根源的な質問に答えられる場合は、実に少ない。(p.258)

こうした記述を読むと、因果関係を蓋然性の高さで説明する人文系の多くの分野では地球科学に親近感を持つのではないでしょうか。この親近感を得て本文に移ると、難しい専門用語も軽々と飛び越えて読み進められます。

 

下巻では、2億5000万年前から現代までの間、大陸が移動し続けていること、隕石衝突やたびたび起こる大規模噴火などが語られます。それらは気候を左右し、生物に大きな影響を与えます。ヒト出現以降、人間の生活を脅かすのであればそれらは「災害」と呼ばれるでしょう。

しかし、災害の前提にあるのは地球の活動です。個人や地域に降りかかってくる災害を考えるうえにあたり、マクロな視点での地球活動を知っておいてもいいように思います。地球レベルでの動向を踏まえると、各所で叫ばれている近い将来の災害(たとえば南海トラフ地震など)以外の災害の可能性も頭の片隅に置かざるを得ないし、起こるであろう災害に対してもやや冷静な目で見ることができるのではないでしょうか。

 

災害が強く意識されている今だからこそ、本書は広く読まれて欲しいと思います。