TwitterのTLにたびたび流れてくる感想に押されて「色の博物誌」を観てきました。
山手線の電車を目黒駅で降りて、坂道を下っていくと見えてくる目黒川。この川を渡るのは何年ぶりだろう、などと少し昔を思い出しながら川沿いをしばらく歩いて目黒区美術館に到着しました。
「色の博物誌」では国絵図と浮世絵を中心に江戸時代の色を紹介しています。なかでも私が観る時間を多く費やしたのは国絵図と色材です。
国絵図は、岡山大学が所蔵する慶長〜元禄期の備前国・備中国(いずれも現岡山県)を描いたもので、とても色鮮やかです。江戸時代の絵図としては古い時期ものを数点まとめて見られる機会はそうそうなく、比較することで視点や描き方の差、埋め立て地の進展度合いなどを読み取ることができます。
また、絵図のどこにどんな色材が用いられたかが示されており、制作時期によって用いられる色材の変化も分かります。
国絵図コーナーと浮世絵コーナーの間には、鉱物や植物など多種多様な色材が展示されています。文字や写真で見たことはあっても、辰砂(朱、赤)や群青(青)、胡粉(白)など、実物を初めて目にする色材も多く、見入ってしまいます。
加工前の藍の展示や、イタボ牡蠣から胡粉を製造する工程の映像などもあり、小スペースの展示ながら相当な手間がかけられていることがうかがえます。
「色の博物誌」は派手でもなく大規模でもありませんが、しっかりとした研究の蓄積の上に成り立った展覧会であることは疑いようがありません。個人的には、こういった展覧会こそ数多く観たいです。
最後に、エントランスに戻って改めて読んだ館長の「ごあいさつ」に心を打たれました。(急いでiPhoneのメモに打ち込んだので間違いがあるかもしれません)
こうしたことが可能になったのは、学芸員たちの努力と経験に拠るところはいうまでもないことですが、
大きな組織の美術館や博物館では到底なしえないような、
むしろ当館のような規模の小さな美術館であるからこそなし得た事業で、
企画から交渉、作品解説、展示にいたる全ての作業を
少ないスタッフによってきめ細かく目配りをしていることの積み重ねによる
産物ということができます。
トップが部下の日頃の取り組み(概ね表に出ることのない)を、胸を張って対外的なメッセージとして伝えているのです。このような上司の下で働けるのは羨ましい限りです。
「色の博物誌 江戸の色材を視る・読む」
場所:目黒区美術館
会期:〜2016年12月18日(日)
観覧料:800円(一般)