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独り身の40代、大学院進学と博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

装幀も美しい『絵はがきの別府』(松田法子著)

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今日は休日だったので、なかなか進まない論文を書きつつ、その合間に休憩がてら読んでいたのが『絵はがきの別府』(松田法子著、古城俊秀監修)という本です。

 

別府の近代史を理解できる

数万枚に及ぶ個人コレクションの絵はがきを基に近代の別府を概観するという構成になっていますが、緻密な作業の裏付けを推測させる文章のうえ、しっかりと参考文献も示されており、内容は選書レベルです。

著者の松田法子氏は、「おわりに」で以下のように述べています。

写真絵はがきに切り取られた群像と、文献史料や地図史料などから再構成される別府とが同じ輪郭を描くことは、決してない。そこからは、絵はがきに写されたものと写されなかったものとが、図と地のようにして浮かんでくる。写真絵はがきと文献史料はどちらも、史資料としての可能性と限界の双方を持ち合わせている。それぞれが描き出す〈別府〉の姿のズレにこそ、写真絵はがきが切り出す都市のかたちの特徴がみえてくるだろう。

資料の可能性と限界を明示しているところに著者の真摯な態度をうかがえます。そのために、信頼を置きながら読み進めていくことができるのでしょう。

本書は、別府の近代史を十分理解することができる良書だと思います。郷土史的な本よりも内容は濃いのではないでしょうか。

 

とはいえ、モノクロの絵はがきをパラパラと眺めているだけでも楽しく、観光地の風景の数々に別府への旅情をかきたてられること必至です。

 

美しい装幀

さらに本書は装幀が美しいのです。セピア色の絵はがきを重ね合わせた表紙、厚みはあるけれども軽めの紙質、天・地・小口に塗られた鮮やかなイエロー。こんな本を作りたいです。(作れませんが)

膨大な枚数の絵はがきの撮影は大変だったと推測されますが、1枚1枚、絵はがきの厚さと若干の影を含めてトリミングされています。この工程を経ることで表現される絵はがきらしさ。細部まで行き届いたデザインにうならされます。

 

本を手にすることが好きな方は、本棚に常備しておきたい1冊です。

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