昨日の記事で言及した展覧会に引き続き、2016年に読んだお気に入りの本3冊を紹介します。一般書に限ってですが。
『これからのエリック・ホッファーのために』(荒木優太著)
まず、私のような会社勤めの傍ら細々と研究を続ける人間に「在野研究者」という呼び名を与えてくれたことに感謝します。
本書では16人の個性的な在野研究者の「生き方」が紹介されており、今の在野研究者への応援歌とも言える本です。日々の生活との狭間で何度も研究を辞めようと思ってしまいますが、その際にはこの本を開くことにしています。
『その日暮らしの人類学』(小川さやか著)
「Living for Today―その日その日を生きる―」をキーワードに、経済、社会の状況をしくみを問い直します。現代に存在する(そして影響力を持ちつつある)「主流派」とは異なる経済システムは、他地域だけではなく、過去の社会を考えるうえでも示唆に富みます。具体的な事例が多く読みやすい部類の新書です。
『星々たち』(桜木紫乃著)
今年文庫化された『星々たち』。北海道の、どちらかといえば暗い風景がリアリティを持って描かれ、それがバックグラウンドとなって各編の登場人物を際立たせます。どうしようもない救われなさの深みにはまり込み、その先に何があるのかと読み進めていくと……。
直木賞受賞作品『ホテルローヤル』を読んで著者の描写に惹かれたのですが、それはもちろん健在。言葉の用い方に感嘆することしきりで、著者の紡ぐ文章をいつまでも読んでいたいのです。左手に持つ残りのページが少なくなってくると読むのが惜しくなってきます。