2016年末のエントリで次のように書いてしまったので、今年は地方の小さな展覧会の感想もなるべくアップしていきたいと思います。
大きく派手な展覧会よりも、地域性を重視し、館のサイズに応じた展覧会こそが、全国各地に博物館・美術館が存在することの意義だと思うからです。
というわけで2017年最初に取り上げるのは、徳島県立博物館で開催していた「古代の彩り」です。大きな展覧会ではありません。
日本列島で古代から用いられてきた「朱」。赤く塗られた弥生土器や、朱の付着した鏡(古墳の内部に敷き詰められた朱が付着したもの)の展示で、古代の朱との関わりを見せてくれます。
朱の原料は辰砂(しんしゃ)やベンガラといった鉱物です。昨年、目黒区美術館で開催された「色の博物誌」でも辰砂やベンガラは色材として並んでいました。今回徳島まで足を運んだのは、「色の博物誌」を観て色材に強く関心を持ったこともあります。
展示中盤には、弥生時代と同様の方法で岩礫から辰砂*1を得る実験のプロセスと結果が展示されています。辰砂を含む石灰岩の岩礫をサイズの異なる石器で粉砕し、さらに水簸(粉末を水に混ぜて石と水銀朱を分離する)の工程を経ます。展示資料と解説パネルで、石器の割れ具合や水簸実験の結果を比較して見ることができるようになっています。
この見せ方は歴史系と自然系の部門を有する博物館ならでは。鉄すら広く普及していない時代に朱を得ていた方法がよく理解できます。このパートは「古代の彩り」の売りのひとつではないでしょうか。
古代の彩り -徳島の朱-
会期 2016年12日3日(土)~12年25日(日)(終了しています)
会場 徳島県立博物館(徳島県徳島市八万町向寺山)
阿南市若杉山遺跡は、日本列島で唯一、発掘調査によって弥生時代の辰砂(水銀朱の原料となる鉱物)を採掘していた鉱山跡であることが明らかになっている遺跡です。
この特別陳列では、若杉山遺跡をはじめ、近年、調査が進められている阿南市内の赤色鉱物採掘遺跡の出土品や、鮎喰川・吉野川下流域の集落や古墳から出土した水銀朱と関連する資料を展示し、赤色顔料の生産・流通・消費のあり方や自然科学的な分析といった様々な視点から、古代の朱に迫ります。
*1:展覧会では粉末状になった辰砂を水銀朱と呼称していました。