40代社会人大学院生、博士を目指す。

岡山を拠点とする年齢的にも経済的にも余裕のない社会人が、少しでも研究実績を積み上げようとあがいています。

科研費(奨励研究)にはもう手が届く気がしない

今年(2017年)も採択されなかった科研費(奨励研究)の審査結果が届いた。そろそろ届く頃だろうとは思っていたが、審査結果を見ても結果が変わる訳でもないのでさほど気にも留めていなかった。

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郵便受から縦長のハガキを取り出し、三方を切り取って中を開くとCとあった。評価段階では最低である。昨年はBだったので、さらに評価が低かったことになる。科研費はここ何年も採択されていないが、さすがにCは初めてだ。

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順位の低さに落ち込むのを通り越して、郵便受けの前でしばらく考え込んでしまった。自分の今の研究テーマと手法は何かが間違っているのかもしれない、と。

 

そこまでいかなくとも、私が研究の内容や意義を日本学術振興会や委員に伝えられないのは間違いない。少なくとも科研費にはもう手が届く気がしない。

なんとか拾われた論文が新聞記者の目に留まった話

昨年末(2016年12月)、投稿論文があっさりリジェクトされた。その時の落ち込みようは半端なかった。年末年始を挟んで冷静になり、論文をリライトして別の雑誌に投稿したのが2月。

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その論文を掲載した雑誌が4月中旬に刊行された。この雑誌に査読はなく、編集に関わる人たちで掲載/不掲載を判断するため掲載までの期間は短い(紀要に近い)。当初投稿した雑誌に受理されていたとしても、まだ掲載はされていないだろう。

 

先日、この論文を読んだという某新聞東京本社の記者から電話がかかってきた。全国紙に取材を受けることなどないので少々驚いた。

記者は、私の知人の大学教員から論文を紹介されて(私は知人に抜刷を送っていた)読んだとのこと。論文の内容はローカルな資料を取り上げて分析したものだが、記者に言わせれば、分析の結果は他地域に普遍化されるものかもしれないという。さらに、数か所で今まさに起こっている課題の解決に資する可能性もある、と。そのため、資料を提示して検討結果を積み上げているのは非常に重要だ、と褒めてもらった。

 

正直なところ、私の研究は現代社会に直接影響を与えるものではないと思っている。個人的な関心から立ち上がっているものでしかない。それが新聞記者を通して目の前の課題にリンクすることになるとは。

 

それにしても、論文を読んだうえで内容をその先に結び付けられる記者がいるのは、さすが全国紙の東京本社だと思った。

近いうちに記事にしたいとのことなので、掲載日を楽しみに待ちたい。

今年も科研費不採択で落胆……

郵便受けの中に横たわる薄い封筒は見たくなかった。

封筒の中身はA4の紙1枚。科研費(奨励研究)の不採択通知である。採択されていれば申請完形の書類の束が入っているため、封筒の厚さで採否が分ってしまう。

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昨年の12月、滞在中の東京のホテルで夜中に書き上げて持参した申請書。昨年も近いテーマでの不採択だったため、申請の内容は相当にブラッシュアップした。自信があっただけに今日の落ち込みは激しく、夕食後しばらく何も考えることができなかった。

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研究の助成を受けることができないのはもちろん残念だが、それ以上に現在取り組んでいる研究テーマが認められないことが悔しい。

科研費の不採択や論文のリジェクトが続くと、さすがに仕事の傍らで研究を続けることに挫けそうになる。情けない。

 

温泉宿で論文を書くと捗るのか?@ホテル松葉川温泉(高知県四万十町)

温泉宿に滞在して論文の原稿を書くと捗るのか?

1泊した結果は次のとおり。

・思うほどは書けない (2,000字/3時間)

・意外と作業できる時間はない (5時間)

・思考に集中することはできる

 

四万十川の源流に近い松葉川温泉

以下、しばらく旅行記。

午前中は高知城歴史博物館を見学し、昼食と買い物を済ませて高知市を離れる。

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 高知市から車で1時間ほど高速道路を走って西に向かい、道の駅あぐり窪川で休憩を取る。

目的は豚串。この地域でブランド化された「米豚」を甘辛く味付けして焼いたものだ。網の上で焼く香りに引き寄せられる人は多いはず。1本350円。

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豚串でささやかな欲求を満たした後、四万十川沿いの道を上流に向かって進み、川が二股に別れる地点で日野地川という川に切り替えてさらに遡る。あぐり窪川から30分ほどで到着したのは、川沿いにぽつんと建つホテル松葉川温泉だ。この日の宿泊地である。ホテルのサイトの紹介文にあるように周りに店舗などは一切ない。あるのは渓流と森と空。

15:00にチェックインをして8畳の和室に入って荷物を置く。着替えや洗面道具のほかに持ち込んだのはノートパソコンと数冊の本と大量の文献コピー。1か所しかないコンセントに合わせて机と椅子を移動させ、パソコンを設置する。

部屋の窓からは渓流に架かる赤い橋が見える。 

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旅館といえば茶菓子。普段はゲストハウスかビジネスホテルにしか泊まらないため新鮮だ。こちらの茶菓子は生姜せんべいだった。

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せっかくの温泉宿なので、まずは温泉に浸かる。露天風呂は渓流に面しており、川面からの高さもあって開放感は抜群。

(温泉の撮影はできないのでこちらのサイトを参考に 温泉 | ホテル松葉川温泉

松葉川温泉の湯は透明で少しとろっとしている。そして湯に浸かった後しばらくは肌が滑らかになる。どれくらい滑らかになるかといえば、いつもの調子で軽く手にしたiPhoneが滑り落ちるくらい。

この泉質と開放感が好きで、松葉川温泉には日帰り入浴で何度も訪れている(宿泊は初めて)。

 

湯を出てから周辺を散策。部屋から見えていた赤い吊橋を渡って対岸の森へ。森の中には散策できる道が整えられていて、河原に降りることもできる。

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部屋に戻って夕食までの1時間は、急遽舞い込んだ校正作業に費やす。 夕食は一番安いプランだが、普段の食事を考えると十分贅沢。 やはり豚肉がおいしい。

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デザートは苺のアイス。

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夕食後、期限が迫った確定申告の仕上げに1時間かけて、ようやく論文の原稿に取りかかる。1時間程度。

原稿を22:00で切り上げ、再度入浴してから23:00に就寝。

 

翌朝は6:00に起床して7:00まで原稿執筆。

三度、温泉に入ってから朝食を取る。骨まで柔らかくなったアメゴ(アマゴ)は頭から尾まで食べられる。

朝食後、チェックアウトまでの1時間でキーボードを叩く。

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集中して自分の思考に入り込めた

という訳で、1泊しての作業時間は5時間、そのうち原稿執筆に充てられたのは3時間だった。どうしても温泉に数回入ったり、食事に時間をかけたりするので思ったより時間を取れなかった。入浴回数を減らせば、もう1時間くらいは捻出できそうだ。

 

小刻みの3時間で書けたのは2,000字。すでに書いていた文章の切り貼りもあるので、一から書いた文章は1,500字程度だろう。私の執筆スピードは早いうちには入らないが、それでももう少し書きたかったのが本音だ。

 

文章量が稼げなかった代わりに得られた最大の成果は、考えを納得のいくかたちでまとめることができた点だ。普段より集中して自分の思考のなかに入り込めた状態だったことは間違いない。

家にいると家事を気にせざるを得ないし、カフェや図書館だと机の専有時間に配慮する必要もある。こうした心配事を意識の外に追いやることができたのだと思う。湯に体を沈めていても頭は研究モードになっていたし。

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罪悪感を感じなかった2日間

多少は成果もあったので、温泉宿での論文執筆には再度挑戦したい。立地や泉質が気に入っているので、また松葉川温泉になるかもしれないが。

なお、いい温泉とおいしい食事で過ごした2日間、少しでも研究を進められたせいか罪悪感を感じなかったことも強調しておきたい。 

 

リジェクトされた論文を別の雑誌に投稿してレモンパイを崩す夜

今、レモンパイをフォークで崩しながらこの記事を書いています。論文を無事提出して、夕食の買い出しついでに買って来たレモンパイです。

提出したのは年末にリジェクトされた論文を大幅修正したもの。リジェクトのメールを開いてからしばらくは呆然としていました。内容に自信もあったので……。

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リジェクトされた論文のテーマに見切りをつける

見たくないメールを受信してから数日を経て、冷静に考えて別の投稿先を探すことにしました。

同じ雑誌に再投稿する道もあるのですが、査読コメントに納得がいかない点や、私がこの学会の「作法」を身につけるまでに時間がかかる点を考慮しました。そしてなにより、この研究テーマに一旦見切りをつけたのです。

1年前の私は研究テーマを、A(本命)、B(対抗)の2つ掲げていました(実はもう1つありますが)。リジェクトされた論文はテーマBです。

A・Bどちらかのテーマで早いうちに成果を出して大学院に進学する予定でしたが、今回リジェクトされたことでテーマBについては諦めがつきました。このテーマでのネタはいくつかあり、しばらく研究を続けられそうな見通しも持っていますが封印することにしました。老後の楽しみに取っておきます。

 

論文を別の雑誌に投稿

このため、今回の論文は早いうちに世に出して「成仏」*1させるのがいいだろうと判断しました。早く出してもらえそうなところに相談し、投稿を受け付けてもらえることになりました。編集部の判断で掲載の可否が決まる「紀要」的な雑誌です。

厳しい査読がないとはいえ、一度はリジェクトされた論文なので大幅に修正し(一応査読コメントも参考にして)、投稿先の雑誌のスタイルに整えて、今日の夕方にメールで送信しました。

 

編集部の方は「内容的には問題ないと思う。もし掲載できなくても別の雑誌を紹介する」と言ってくれました。捨てる神あれば助ける神あり、とはこのこと。

 

初めて買ったレモンパイは甘さと酸味のバランスがいい感じです。

*1:Twitterのフォロワーさんの言葉をお借りしました。この状態を表すのに絶妙。

「この先10年を研究者として生きるには、今が正念場」と言われて

「なだ君がこの先10年を研究者として生きるには、今が正念場」

先日、人づてに聞いた言葉です。

言葉を発したのはNさん。Nさんは大学などの研究機関に属していませんが、論文の質も数も十分(ただし正当には評価されていないような)という方です。

(以前、Nさんのことを話題にしたエントリはこちら)

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さて、私が自分の代表的な研究成果を挙げるなら、マイナーテーマながら概説書などでも主要先行研究として取り上げられている論文になります。ただし、この論文は10年前の発表です。

この10年間を振り返れば、興味関心がさまざまな方向に向き、それぞれの方向で論文を書いてきました。大学以来の研究テーマが壁にぶつかり、その壁を避ける道を探していたような気もしますが、結局、どれも体系立った研究にできませんでした。

科研費申請の業績欄を埋めるたび、この10年間にまともな研究成果を出せていないことを痛感します。

 

1年ほど前、しばらく関わる研究テーマを二つに絞り、最近、二つから一つにする覚悟を決めたところです。この研究でなんとか大きな果実を得たいと思っていますが、そのことをNさんも含めて広くは伝えていません。

 

こうした状況でのNさんの冒頭の言葉です。私がしばらく成果を出せていないことや、現状を打破するためにあがいていることがNさんには見えているのでしょう。勝負時は今、ということまで。

遠くから応援してくれていると解釈します。正念場を乗り切ります。

投稿論文がリジェクトされてシュトーレンをつつく夜

今日、論文がリジェクト(不採用)されたとの連絡を受けました。自信のある論文だっただけに、連絡を受けてからしばらく車の中で呆然としていました。

 

この論文の内容は、近年関心のあるテーマですが、大学以来の専門分野とは異なります。私の中では、テーマB(◯対抗)としている研究テーマです。

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知人のアドバイスも受けながらこのテーマに該当しそうな学会を探し、投稿先を定めました。論文投稿時の状況は以下のとおりです。

・投稿する学会誌を決めてから、安くない入会金と年会費を納入して入会。

・この学会に知り合いは1人のみ。

・投稿の際に必要な所属名(必要なのか疑問ですが)は、自分の所属する会社名。

アウェイ感十分ですが、岡山大学図書館にこもって過去の学会誌掲載の論文を読みあさり、傾向を抑えたつもりで論文を書きました。

 

しかし、門前払いでした。

 

リジェクトの理由として挙げられたのは次の3点です。

1 示された事実からこの結論を導くことは難しい。

2 根拠となるべき表がない。

3 AとBの関係が明示されていない。

 

1については、論証不足や論の飛躍と言われれば、そうかもしれません。もう少し材料を準備して周到に論を展開するべきでした。

表(2)があれば理解を助けることは分かっていたのですが、紙幅の関係で表は落としました。ただ、表に示されるような各項目については、本文中でそれぞれ詳しく触れているつもりです。これで根拠がないとまで言われるとつらいです。

3については、指摘された箇所よりも前の章でA・B間の関係を示しています。指摘箇所で書いていないのは丁寧さに欠けるのかもしれませんが、明示されていないことはないはずです。

 

投稿論文がリジェクトされたのは初めてではありませんが、今回のリジェクト理由には3割ほど納得がいきません。分野や学会ごとの「作法」の違いもあるのでしょうか。

 

さすがに落ち込んだので、売れ残りのシュトーレンを買ってきてフォークでつついて慰めています……。